ルベーグの優収束定理を用いて,微分と積分の交換可能の条件を求める.
定理
上の関数が次の条件を満たすとする.
1) 各に対してはで積分可能である.
2) は存在し,ある1変数関数でとなるものが存在する.
このときが成立する.
定理(ルベーグの優収束定理)
関数列は次の条件を満たすとする.
1) a.e.
2) あるですべてのに対して a.e.を満たすものが存在する.
このときが成立する.
注意
1) 関数列にの条件を課す必要はない.
2) と積分との交換がこのような単純な条件でできることが,ルベーグ積分が優れている点のひとつである.
(証明)
a.e
より
a.e.
であるから
a.e.
ファトゥの補題から
より
から
である.また
より
から
となるので
である.つまり
でこれはを意味する.(証明終)
系(有界収束定理)
で,関数列は次の条件を満たすとする.
1) はで概収束する.
2) あるですべてのに対して a.e. となるものが存在する.
このときが成り立つ.
[1] 非負単関数
非負単関数に対して,そのルベーグ積分を
と定義する.
[2] 非負可測関数
非負可測関数に対して,そのルベーグ積分を
はを満たす非負値単関数
と定義する.可測集合上の積分はに指示関数を乗したものの積分を考えればよい.
[3] 一般の関数
実数値可測関数はと非負の部分と負の部分に分けてそれぞれに[2]を適用すればよい.ただしいずれの積分値も無限大に発散する場合には定義しない.
複素数値の場合には実部と虚部に分ければ,それぞれが実数値ゆえ同様である.
これでひとまず積分の定義は終わった.
右半開区間の定義から始めて,遠くへ来たわりには定義はあっけないものという感じがする.
それもそのはずで,ここまでルベーグ測度を十分に整備してきたからこそである.
定理
を満たす単関数列が存在すれば,
が成り立つ.
定義
はルベーグ可積分関数であると定義する.
ただしルベーグ可積分関数とはルベーグ積分の値が有限である関数のことである.
この集合を a.e. という同値関係で割る.
定義
と定義する.
左辺はなどとも書かれる.
定義(単関数)
値を有限個しか持たない関数を単関数という.ただし値としてを許す.
数式で表すとが単関数であるとは次のとおりである.
および相異なる実数を用いて
とかけることである.ここでは集合の指示関数(特性関数)といい
のときで,のときを満たす関数と定義される.
ところどころで一定の値をとり,しかもその値の出方は有限個に限られるものなので,扱いやすいといえる.
どんなものが単関数かは以下の例を見てもらえばより一層分かるだろう.
例(単関数の例)
1) 定数関数は単関数である.
2) で1,で2をとり,その他はすべて0をとる関数は単関数である.
例(単関数でない例)
1) 1次関数や2次関数は単関数でない.
2) で定義された関数であり,で,で,でのように長さがになるたびに関数の値にされる関数も段々になっているが単関数ではない.無限個の値をとるからである.
まずこの単関数に対してルベーグ積分を定義する.
そして他の関数に拡張することを考えるわけだが,このアイディアを支えるのが次の定理である.
定理.(可測関数は単関数で下から近似できる)
は可測関数であり,非負値でを許すとする.このとき,以下の条件を満たす単関数列が存在する.
i) 各に対し,.
ii) すべてのは有界な関数かつを満たす.
i)は可測関数は単関数で下から近似できることいっており,
ii)の後半は各単関数の定義域がおおよそ有限な範囲に収まっていることをいっている.