べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

ある命題への広義リーマン積分の例

新装版 数学公式集をながめていたら,次の記述を見つけた。

f,gが広義リーマン積分可能であっても,2つの関数の積fgが広義リーマン積分可能とは限らない。

確かにそのとおりになりそうな命題であるが,具体例を挙げなければ理解した気にはならないだろう。
ここしばらくの間,遠方,つまり\int_a^\inftyでの例を考えていたのだが,なかなか難しい。
残念だが一旦保留し,解析入門 (岩波全書 325)を参考にして有限区間で例を作ることにした。

例.
\displaystyle f(x)=g(x)=\frac{\sin x}{x^\frac{3}{2}}として,区間(0,\frac{\pi}{2})で広義リーマン積分可能か調べる。
上端\frac{\pi}{2}は問題ない。
下端は
\sqrt{x}f(x)=\frac{\sin x}{x} \to 1 as x \to +0
より0でも広義リーマン積分可能である。

一方f(x)g(x)=(f(x))^2=\frac{\sin^2 x}{x^3}ジョルダンの不等式により
\sin x \geq \frac{2}{\pi} xであるからf(x)g(x) \geq \frac{4}{\pi^2} \cdot \frac{1}{x}となる。
与えられた区間での最右辺の積分
\int_0^\frac{\pi}{2} \frac{4}{\pi^2} \cdot \frac{1}{x} dx =\frac{4}{\pi^2} [ \log x ]_0^\frac{\pi}{2}=\inftyで発散するから,fgも発散する。

新装版 数学公式集解析入門 (岩波全書 325)