リーマン積分からルベーグ積分への転換は「たて」から「よこ」へにある
このルベーグ積分の話を始めた2年以上前の記事を見ると次のようなことが書いてある.
「すべての話の始まりは,様々な図形の面積・体積を測るにはどうすればいいかということだ.
素朴に考えると,長方形の面積・体積を定義し,
他の図形は長方形の近似で考えるのがいいと思われる.」
長方形の面積は小学校から(たて)×(よこ)で計算してきた.
リーマン積分の場合,定義域を小区間に分割し
(小区間の幅)×(小区間の任意の元の関数の値)で各小区間における長方形の面積を計算し,
たし合わせることによってリーマン和を計算した.
区間の幅の分割の仕方を初めに決定するので,
積分そのものの「難しさ」はどうしても関数の値にゆだねられることになる.
長方形の面積の話で言えば,(たて)に難しさを押し付けているのである.
ルベーグ積分はルベーグ測度を考えることで,定義域を複雑な図形へ分けることも許す.
こうすることで積分そのものの「難しさ」を関数の値からルベーグ測度に譲り渡している.
つまり(たて)から(よこ)へと視点を移しているのである.
(よこ)というのは関数にとっては関数の値のことである.
そこでまず定義域を分割したとき,その分割のひとつひとつにおいて定数である関数を考えると話が早い.
このような関数を単関数という.
そして単関数で近似できる関数を考えればよい.
実は近似可能な関数は可測関数なのである.あの定義はそういう意味もあるのだ.
岩手大学2016農学部第5問を解く
(1)は座標の決定なのでなるべく低い次数の方程式に帰着させるほうがよいと思う.
(2)はいくつかの方針が考えられる.
代入することでの方程式にするか,の方程式にするか,の方程式にするか.
そのあとは定数を分離するか,判別式か.
5.
放物線と円について,次の問いに答えよ.
ただし,は正の定数である.
(1)のとき,放物線と円の共有点の座標をすべて求めよ.
(2)がすべての正の実数値をとって変化するとき,放物線と円の共有点の個数はどのように変わるか,調べよ.
(解)
(1)
を代入するとである.
を代入して整理するとからを得る.
のとき,のときとなる.
共有点の座標はである.
(2)
をに代入して整理すると,…(☆)となる.
ここでおよびとする.
でとするとである.
関数は偶関数なのでのとき極大値,のとき極小値である.
座標上に上記2関数のグラフを描くことで,次のことが分かる.
すなわちのとき,方程式(☆)の解の個数は0個,
すなわちのとき,方程式(☆)の解の個数は2個,
すなわちのとき,方程式(☆)の個数は3個,
すなわち のとき,方程式(☆)の解の個数は4個となる.
方程式(☆)の解の個数と放物線と円の共有点の個数は一致するので,解が得られた.(終)
岩手大学2016農学部第4問を解く
(3)の面積比で少しだけ驚いた.
試験会場で余裕がなくなっているとがむしゃらに計算することになるだろう.
実際には曲線と接線で囲まれた部分の面積なので,
被積分関数が因数分解できることを考えるとそうでもない.
4.
曲線をとし,曲線上の点における接線をとする.
(1)接線の方程式を求めよ.
(2)を実数とし,点は接線上にあり,点は曲線上にあるとする.
の範囲をが動くとき,の最大値を求めよ.
(3)接線と曲線で囲まれた図形は,軸によって2つの部分に分けられるが,
それらの面積のうち小さいほうを,大きいほうをとするとき,の値を求めよ.
(解)
(1)
からのときである.
よってである.
(2)
と定める.
となる.
微分して
であるからの範囲では増減表をかくことでで最大値をとることが分かる.
つまりはのとき最大値をとる.
(3)
直線と曲線の差はである.
の因数分解から軸よりも左側の積分区間はであり,
軸よりも右側の積分区間はである.
(左側)
.
(右側)
.
つまりであり,.
岩手大学2016農学部第3問を解く
3.
89も29も素数なので,(1)はすぐ1であることが分かる.
(2)以降の右辺が-20である意味がつかめないのが悔しい.
おそらく何か由来があると思うのだが….
次の問いに答えよ.
(1)ユークリッドの互除法を用いて,89と29の最大公約数を求めよ.
(2)2元1次不定方程式の整数解を1組求めよ.
(3)2元1次不定方程式の整数解として現れるの値のうち,
正のものを小さい順にとする.このとき自然数に対して,
をで表せ.
(4)(3)で定めたに対し,を満たすの値をとするとき,
自然数に対して,をで表せ.
(解)
(1)
割り算することで,およびとなる.
よって最大公約数は1である.
(2)
(1)の1つ目の式をと変形し2つ目の式に代入することで,
を得るからが整数解のうちの1組である.
(3)
の両辺を倍することで,となる.
つまりの整数解はを整数としてである.
ここでが最小となるのはのときをとる.
ゆえには初項,公差の等差数列で表現できるので
が得られる.
(4)
にを代入すると,
よりを得る.
これよりとなる.以上より
(終)
素元と既約元
何度考えても混乱するのでまとめてみる.
こういうところで書いておけば少しは頭に入るだろう.
を可換環とする.
が素元とはならばまたはが成り立つことを言う.
が既約元とはならばまたはのいずれか一方が単元であることを言う.
単元とは逆元をもつ元のことを言う.
素元という言葉から,素数を連想すると思う.
中学校で素数を習う際には,上記の既約元の形で定義するが,素元の定義と必要十分条件なので問題ない.
このことを証明していこう.
可換環について,に対し
ならばまたはが成り立つとき,を整域という.
整域はつまり零因子が存在しない,ということである.
通常の整数の集合や有理数の集合は整域である.
行列は零因子があるので,そのままでは整域にはならないことが分かる.
以下は整域とする.
まず整数の話に限らず「素元ならば既約元」を証明する.
(証明)
を素元とし,であるとする.
左辺がの倍数ゆえ右辺もの倍数である.
素元の定義からならばまたはが成り立つ.
であると仮定すると,となるがとれる.
元の式に代入するとであるが移行してでくくるととなる.
は整域でから,つまりである.
これはが単元であることを意味する.
の場合も全く同様の議論で証明できる.(証明終)
逆はじつは簡単ではない.
イデアルを導入しなければならないからだ.
そして素・極大それぞれのイデアルの概念を説明する.
さらに整数全体で作られる環は単項イデアル整域だということをいう.
こうすれば次の流れで証明できる.
(証明の概略)
既約元が生成するイデアルは極大イデアルである.
元の整数環を極大イデアルで割ると体となる.
体は整域である.
整数環を割って聖域となるイデアルは素イデアルである.
素イデアルを生成するのは素元である.(証明の概略終)
一行目にPID(単項イデアル整域)であることを,
環を割るとは同値類の環を考えることを,
割ると整域や体となることはそれぞれ証明が必要である。
双曲線関数,再び
双曲線関数 - アクセス不能の原因。
ここでも書いたとおり,大学1年のころにを学んだ.
こんなものがあるのか,と思いながらいまいち使う機会もなくぼんやりと覚えるにとどまった.
最近,円の方程式からを定める話の類似で,
双曲線の方程式からと定めることを知った.
これならおそらく死ぬまで忘れないだろう。
数学の記事の定理などに証明を埋め込む
数学の記事を書くのは面白いのだが、困っていたのは証明である。
数学は証明が絶対必要だが、記事として読むときには少しわずらわしさを感じることがある。
大まかに概要をつかみたいときには証明はとにかく脇に置いておきたいときもある。
今まではそういうときには別の記事に分離していたのだが、
ふとYouTubeを見ていたときに「もっと見る」の存在に気がついた。
こうして文章の表示非表示が自由に切り替えられるのなら、使わない手はないだろう。
色々調べた結果
HTML表示/非表示切り替えブロック;divとボタン: 万象酔歩
こちらのサイトの記事を使わせていただくことにした。
早速
測度であることの証明 - アクセス不能の原因。
の最初の補題で実験してみた。
昔ながらのボタンではあるが、なかなかいい。
ただし変なところがあって、はてなブログの特性で自動的に改行のタグが放り込まれる。
そうならないようにタグ上ではいくつかの場所の改行をなくしておく必要があった。
ところで今回参考にさせていただいたサイト様にトラックバックをしたかったのだが、
このはてなブログってトラックバックの機能がないようである。
なんという不親切さか…!