べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

単関数列と可測関数

定義(単関数)
値を有限個しか持たない関数を単関数という.ただし値として\pm \inftyを許す.

数式で表すとfが単関数であるとは次のとおりである.
E_1 \sqcup E_2 \sqcup \cdots \sqcup E_kおよび相異なる実数a_1 , \ldots , a_kを用いて
\displaystyle f(x) = \sum_{j=1}^k a_j \chi_{E_j}(x)
とかけることである.ここで\chi_Aは集合Aの指示関数(特性関数)といい
x \in Aのとき\chi_A(x)=1で,x \notin Aのとき\chi_A(x)=0を満たす関数と定義される.

ところどころで一定の値をとり,しかもその値の出方は有限個に限られるものなので,扱いやすいといえる.
どんなものが単関数かは以下の例を見てもらえばより一層分かるだろう.

例(単関数の例)
1) 定数関数は単関数である.
2) 0 \leq x \leq 1で1,4 \leq x \leq 5で2をとり,その他はすべて0をとる関数は単関数である.

例(単関数でない例)
1) 1次関数や2次関数は単関数でない.
2) 0 \leq x \leq 1で定義された関数であり, 0 \leq x \leq \frac{1}{2}\frac{1}{2}\frac{1}{2} \leq x \leq \frac{3}{4}\frac{3}{4}\frac{3}{4} \leq x \leq \frac{5}{8}\frac{5}{8}のように長さが\frac{1}{2^n}になるたびに関数の値に+\frac{1}{2^n}される関数も段々になっているが単関数ではない.無限個の値をとるからである.

まずこの単関数に対してルベーグ積分を定義する.
そして他の関数に拡張することを考えるわけだが,このアイディアを支えるのが次の定理である.

定理.(可測関数は単関数で下から近似できる)
fは可測関数であり,非負値で+\inftyを許すとする.このとき,以下の条件を満たす単関数列\{ s_j \}_{j=1}^\inftyが存在する.
i) 各xに対し,s_1(x) \leq s_2(x) \leq \cdots \rightarrow f(x)
ii) すべてのs_j有界な関数かつm(\{ x \mid s_j(x) \neq 0 \}) < \inftyを満たす.

i)は可測関数は単関数で下から近似できることいっており,
ii)の後半は各単関数の定義域がおおよそ有限な範囲に収まっていることをいっている.