べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

交代群がいつ可解群になるのか

n \geq 4に対して交代群A_{n}が非可換であることは,どこかに書いてあるようで書いていない.
実際に
  (1\, 2\, 3)=(1\, 3)(1\, 2),\, (2 \, 3 \, 4)=(2 \, 4)(2 \, 3) \in A_{n}
に対して
  (1\, 2\, 3)(2 \, 3 \, 4)=(1\, 2)(3 \, 4)
かつ
  (2 \, 3 \, 4)(1\, 2\, 3)=(1\, 3)(2 \, 4)
であるからアーベル群に成りえない.

(20.09.09 追記)
そういうわけで非可換なわけだが,それに加えてA_5単純群であることが示される.

定義(単純群
Gが自分自身と\{ 1 \}以外を正規部分群としてもたないとき,単純群という.

定理
A_5単純群である.

いくつか準備をする.

補題
A_5は3次巡回置換(1\, 2\, 3),(1\, 2\, 4),(1\, 2\, 5)で生成される.
ここで生成されるとは,これらの有限個の積で書かれる,という意味である.
またこれら3個は次のように適切な3次巡回置換で変換される.
ここで変換とは\sigmaに対して,ある\tau\tau \sigma \tau^{-1}と表すことである.
 (3 \, 4 \, 5)(1\, 2\, 3)(3\, 5\, 4)=(1 \, 2 \, 4),
 (3 \, 5 \, 4)(1\, 2\, 3)(3\, 4\, 5)=(1 \, 2 \, 5).

(定理の証明)
A_5正規部分群N \neq \{ 1 \}とする.
Nは2個の互換の積,3次巡回置換,5次巡回置換のいずれかを要素に持つ.
それらは適当にA_5の要素で(1 \, 2)(3 \, 4),(1 \, 2 \, 3),(1 \, 2 \, 3 \, 4 \, 5)へ変換されるが,
NA_5正規部分群であるからどれかがNに属するとしてよいことになる.
(1 \, 2 \, 3)が属するならば補題によりN=A_5が成り立つ.
また(1 \, 2)(3 \, 4)が属するならば(1 \, 5 \, 2)(1 \, 2)(3 \, 4)(1 \, 2 \, 5)=(1 \, 5)(3 \,4)Nに属する.
(1 \, 5)(3 \, 4)(1 \, 2)(3 \, 4)=(1 \, 2 \, 5)Nに属する.補題によりN=A_5が成り立つ.
さらに(1 \, 2 \, 3 \, 4 \, 5)が属するならば(1 \, 4 \, 2)(1 \, 2 \, 3 \, 4 \, 5)(1 \, 2 \, 4)=(1 \, 3 \, 2 \, 5 \, 4)Nに属する.
(1 \, 2 \, 3 \, 4 \, 5)(1 \, 3 \, 2 \, 5\, 4)=(1 \, 4 \, 2)Nに属するが,逆元(1 \, 2 \, 4)も属するので補題によりN=A_5が成り立つ.
以上よりいずれの場合にもN=A_5が成り立つ.(定理の証明終)

これで5次交代群単純群であることがわかったが,さらに次のことが示される.

定理
A_n(n \geq 5)単純群である.


定理
可解群の部分群は可解群である.