べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

ユークリッドの互除法について

a,bの最大公約数を{\rm gcd}(a,b)と表す.

定理.(ユークリッドの互除法
a, b(a \geq b)を整数として,abで割った余りをrとする.
このとき,{\rm gcd}(a,b)={\rm gcd}(b,r)

教科書の証明はなんだか文章ばかりで難しかった覚えがある.
今ならできるだろうか…?

(証明)
abで割った商をqとするとa=bq+rと表せる.
右辺をみるとb,rの公約数はaの約数となっており,
a,bの公約数になっていることがわかる.
またr=a-bqと変形するとa,bの公約数はrの約数となっており,
b,rの公約数になっていることがわかる.
つまりa,bの公約数の集合とb,rの公約数の集合は等しいので,
最大公約数は等しい.(証明終)

あっさり解決できた.少しくらいは簡単な整数論が身についているようだ.
このユークリッドの互除法は使いかたが問題である.

例えば73, 17の最大公約数を求める場合は,「どんどんスライドさせて割っていく」のである.
73=17 \times 4 + 5(割り算の原理)
17=5 \times 3 + 2 (割る数と余りで割り算する.以下繰り返す.)
5=2 \times 2 + 1
2=2 \times 1(割り切れたら終了)
よって最大公約数は1である.

ひとまずユークリッドの互除法の使いかたはいいだろう.
ところで上の証明を見ると,結局は次の問題に帰着される.

問.
{\rm gcd}(a,b)={\rm gcd}(a-b,b)を示せ.

証明はa=(a-b)+bとすれば,上の証明となんら変わらない議論で示せる.
これがいわゆる,ユークリッドの互除法の原理と呼ばれるものである.

二次形式って何ですか?

正直に告白すると、二次形式というものを勉強したことがない。
使ったことが全くない。

Wikipediaによれば、二次形式は多方面で中心的な地位を占めるもののようだ…。
全く知らない。

いままで中心を回避して勉強していたということなのだろうか。
まるで複素積分のようである。

カップル成立の確率

安田亨先生の伝説の良問100を読んでいたら,次の問題があった。

問.
男性が2人,女性が2人いる。各々は自分の異性をでたらめに1人指名する。
互いに相手を指名すればカップルが成立するものとして,
ちょうど1組カップルが成立する確率を求めよ。

n人まで一般化する方法も書いてあり,包除原理で計算している。

微分と積分の交換可能の条件

ルベーグの優収束定理を用いて,微分積分の交換可能の条件を求める.

定理
\mathbb{R}^2 上の関数fが次の条件を満たすとする.
1) 各xに対してf(x,y)y積分可能である.
2) \displaystyle \frac{\partial f}{\partial x}は存在し,ある1変数関数g \in L^1\displaystyle |\frac{\partial f}{\partial x}(x,y)| \leq g(y)となるものが存在する.
このとき\displaystyle \frac{\partial}{\partial x} \int_\mathbb{R} f(x,y)dm(y) = \int_\mathbb{R} \frac{\partial f}{\partial x}(x,y)dm(y)が成立する.

ルベーグ積分の収束定理(ルベーグの優収束定理)

定理(ルベーグの優収束定理)
関数列\{ f_j \}_{j=1}^\infty は次の条件を満たすとする.
1) f_j \to f a.e.
2) あるg \in L^1ですべてのjに対して|f_j| \leq g a.e.を満たすものが存在する.
このとき\displaystyle \lim_{j \to \infty} \int f_j dm = \int \lim_{j \to \infty} f_j dm = \int f dmが成立する.

注意
1) 関数列にL^1の条件を課す必要はない.
2) \lim積分との交換がこのような単純な条件でできることが,ルベーグ積分が優れている点のひとつである.

(証明)
|f_j| \leq g a.e
より
-g \leq f_j \leq g a.e.
であるから
0 \leq g+ f_j \leq 2g, 0 \leq g -f_j \leq 2g a.e.
ファトゥの補題から
\displaystyle \int \liminf_{j \to \infty} ( g+ f_j )dm \leq \liminf_{j \to \infty} \int (g +f_j)dm
より
\displaystyle \int (g+f) dm \leq \liminf_{j \to \infty} \int (g +f_j)dm
から
\displaystyle \int f dm \leq  \liminf_{j \to \infty} \int f_j dm
である.また
\displaystyle  \int \liminf_{j \to \infty} ( g-f_j )dm \leq \liminf_{j \to \infty} \int (g -f_j)dm
より
\displaystyle \int (g-f) dm \leq \liminf_{j \to \infty} \int (g - f_j)dm
から
\displaystyle \int (-f) dm \leq \liminf_{j \to \infty} \int (- f_j)dm
となるので
\displaystyle \int f dm \geq \limsup_{j \to \infty} \int f_jdm
である.つまり
\displaystyle \limsup_{j \to \infty} \int f_jdm \leq \int f dm \leq  \liminf_{j \to \infty} \int f_j dm
でこれは\displaystyle \lim_{j \to \infty} \int f_j dm = \int f dmを意味する.(証明終)

系(有界収束定理)
m(E) < \inftyで,関数列\{ f_j \}_{j=1}^\inftyは次の条件を満たすとする.
1) \{ f_j \}_{j=1}^\inftyEで概収束する.
2) あるM \in \mathbb{R}ですべてのjに対して|f_j| \leq M a.e. となるものが存在する.
このとき\displaystyle \lim_{j \to \infty} \int_E f_j dm = \int_E \lim_{j \to \infty} f_j dmが成り立つ.

ルベーグ積分の収束定理(ベッポ・レヴィの単調収束定理)

ベッポ・レヴィの定理を用いると単調収束定理が証明できる.

定理(単調収束定理)
0 \leq f_1 \leq f_2 \leq f_3 \leq \cdotsに対して
\displaystyle \int \lim_{j \to \infty} f_j dm = \lim_{j \to \infty} \int f_j dmが成り立つ.

(証明)
g_j =f_j -f_{j-1}(j \geq 2),g_1 = f_1とおく.
\displaystyle \sum_{j=1}^\infty g_j = \lim_{k \to \infty} f_kに注意してベッポ・レヴィの定理を用いればよい.(証明終)