べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

積分と分数

分数の絡まっている積分はいくぶん考えにくいことがある。
そのそれぞれの解法はお互いに関係ないと思われるので個別に覚えるしかないだろう。
いくつかみていこう。以下積分定数は省略する。

(1)\int \frac{1}{x^n}dxn自然数
これはn=1であるか否かで場合分けする。
\int \frac{1}{x^n}dx= \left \{
\begin{array}{l}
\log x \qquad \qquad (n=1)  \\
\frac{1}{-n+1}x^{-n+1} \quad (n \neq 1)
\end{array}
\right.

(2) \int \frac{1}{x(x+2)} dx
部分分数分解を用いる。これは\frac{1}{x(x+2)}=\frac{a}{x} + \frac{b}{x+2}という恒等式を立てて,a,bを求めればよい。
 \int \frac{1}{x(x+2)} dx=\int \frac{1}{2} (\frac{1}{x} - \frac{1}{x+2} )dx=\frac{1}{2}( \log |x| - \log |x+2|)

(3) \int \frac{1}{\sin x} dx
三角関数が分母に来たとたん,急に難しくなるのはなぜなんだろう。少なくともやり方を知らないと解けないだろう。
 \int \frac{1}{\sin x}dx=\int \frac{\sin x}{\sin^2 x}dx=\int \frac{\sin x}{1 - \cos^2 x}dx
部分分数分解すると
=\int \frac{1}{2}(\frac{\sin x}{1-\cos x} + \frac{\sin x}{1+\cos x})dx=\frac{1}{2}(\log |1- \cos x|-\log |1+\cos x|)

(4) \int \frac{1}{1+e^x} dx
やり方が2通りある。
 \frac{1}{1+e^x}の分母と分子にe^{-x}をかけると
 \int \frac{1}{1+e^x} dx=\int \frac{e^{-x}}{e^{-x}+1}dx=-\log (e^{-x}+1)
別の解法もかく。
 \frac{1}{1+e^x}= \frac{a(1+e^x)}{1+e^x}+ \frac{be^x}{1+e^x}という恒等式を立てて,a,bを求める。
ここでaには分母と約分できるものを,bには分母の微分をそれぞれかけている。
これを解くとa=1, b=-1であるから
\int \frac{1}{1+e^x}dx=\int \frac{1+e^x}{1+e^x}dx+\int \frac{-e^x}{1+e^x}dx=x - \log (1+e^x)

ラグランジュの恒等式

高校数学でたまーに証明込みで出題される恒等式がある。

定理.(ラグランジュ恒等式
(a^2+b^2)(c^2+d^2)=(ac+bd)^2+(ad-bc)^2

両辺ともに展開すればあっというまに証明はできる。
しかしなんでこんな等式が出てきたんだろう,と疑問に思っていた.
今日幾何ベクトルの力を使うとあっさり解決することに気がついた.

(証明)
\vec{a}=\left( \begin{array}{cc} a \\ b\\ \end{array} \right), \vec{b}=\left( \begin{array}{cc} c \\ d\\ \end{array} \right)と定める.
\vec{a},\vec{b}のなす角を\thetaとする.このとき
|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2
=|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2(\cos^2 \theta + \sin^2 \theta)
=|\vec{a}|^2|\vec{b}|^2\cos^2 \theta + |\vec{a}|^2|\vec{b}|^2 \sin^2 \theta
第1項は(\vec{a} \cdot \vec{b})^2に等しく,
第2項は\vec{a}, \vec{b}の作る平行四辺形の面積の2乗に等しいが,
それは\vec{a}, \vec{b}を列に持つ行列のディターミナントの2乗に等しい.
この等式を成分計算すると上式が示される.(証明終)

岩手大学2018農学部第5問を解く

この年度の問題の中で一番解きやすい問題だ。確実に解きたい。

5.
aを整数とする。整式F(x)=x^4+(a+1)x^3+(2a+4)x^2+(a+5)x+1について,次の問いに答えよ。
(1) 整式F(x)が1次式x+1を因数にもつことを示せ。
(2) F(x)=(x+1)G(x)を満たすG(x)を求めよ。
(3) G(x)=0の解の1つが整数であるとき,aの値を求めよ。

解)
(1)
(証明)
F(-1)=(-1)^4+(a+1) \times (-1)^3 +(2a+4) \times (-1)^2 +(a+5) \times (-1) +1=0
であるから,因数定理より整式F(x)x+1を因数にもつ。(証明終)

(2)
割り算(x^4+(a+1)x^3+(2a+4)x^2+(a+5)x+1) \div (x+1)を実行することで
G(x)=x^3+ax^2+(a+4)x+1を得る。

(3)
整数解mを持つとすると,因数定理より
m^3+am^2+(a+4)m+1=0 \cdots
m^3+am^2+(a+4)m=-1
m(m^2+am+(a+4))=-1
左辺は整数よりm-1の約数であるから,m=\pm 1である。
m=1ならば★に代入してa=-3を得る。
m=-1ならば★に代入すると矛盾する。
よって,a=-3である。

岩手大学2018農学部第4問を解く

最初,一般のr>0でやらせるわりには,途中からr=1で固定するためうまみの少ない問題である。
いつもどおりのルートの混じった定積分が登場するが,慌てずに因数分解して公式を使おう。

4.
 x<0の範囲において,直線\ellが放物線C_1 y=-\frac{1}{2}x^2-rと円C_2 x^2+y^2=r^2の両方に接している。r>0とする。
このとき,次の問いに答えよ。

(1) 円C_2に接する直線の方程式をax+by+c=0とするとき,ra,b,cを用いて表せ。ただし,a,b,cは定数とする。
(2) r=1のとき,直線\ellの方程式を求めよ。
(3) r=1のとき,直線\ellと放物線C_1およびy軸で囲まれた図形の面積を求めよ。

解)
(1)
C_2の中心は原点であり,原点と直線の距離が半径rに等しいとき接するから,
r=\frac{|c|}{\sqrt{a^2*b^2}}である。

(2)
放物線C_1の接線の接点を(t, -\frac{1}{2}t^2-1)とおく。
y'=-xであるから,接点での接線の傾きは-tであるから,接線の方程式は
y-(-\frac{1}{2}t^2-1)=-t(x-t)
である。一般形に整理して
tx+y-\frac{1}{2}t^2+1=0
である。(1)より
\frac{|-\frac{1}{2}t^2+1|}{\sqrt{t^2+1}}=1
分母を払って,両辺を2乗して整理すると
t^2(t^2-8)=0
t=0,\pm 2\sqrt{2}
t<0よりt=-2\sqrt{2}
を得る。以上より接線の方程式はy=2\sqrt{2}x+3である。

(3)
求める面積は
\int_{-2\sqrt{2}}^{0}( ( 2 \sqrt{2}x+3)-(-\frac{1}{2}x^2-1))dx
=\int_{-2\sqrt{2}}^{0}(\frac{1}{2}x^2+2\sqrt{2}x+4)dx
=\frac{1}{2} \int_{-2\sqrt{2} }^{0} (x+2\sqrt{2})^2dx
=\frac{1}{2} [ \frac{1}{3} (x+2\sqrt{2} )^3 ]_{-2 \sqrt{2}}^{0}
=\frac{8 \sqrt{2}}{3}
である。

岩手大学2018農学部第3問を解く

典型的な部分と少しだけ頭をつかう部分に分かれた良いパズル的な問題だった。
(3)は案外引っかかるかもしれない。

3.
ある自然数の3乗になっている数を立方数と呼ぶことにする。
例えば,1=1^3, 8=2^3,216=6^3=2^3 \cdot 3^3などは立方数である。
m=25920の立方数について,次の問いに答えよ。
(1) mnが立方数となる最小の自然数nを求めよ。
(2) mの正の約数で,かつ立方数でもあるものの個数を求めよ。
(3) 2^kmの正の約数で,かつ立方数であるものが12個となるような自然数kのうち,最大のものを求めよ。

解)
(1)
m=2^6 \cdot 3^4 \cdot 5^1である.
それぞれの素数の指数が3の倍数となる最小のnを求めればよい.
つまりn=3^2 \cdot 5^2=225である.

(2)
2^6の正の約数で立方数であるものは1, 2^3, 2^6
3^4の正の約数で立方数であるものは1, 3^3
5^1の正の約数で立方数であるものは1である.
これらの組み合わせがmのの正の約数で立方数であるものであるので
合計3 \times 2 \times 1 = 6個である.

(3)
2^km=2^{k+6} \cdot 3^4 \cdot 5^1であり(2)と同様の計算を行う.
2^kmの正の約数で,かつ立方数であるものが12個となるのは,2^{k+6}の正の約数で立方数であるものが6個のときである.
すなわち1, 2^3, 2^6, 2^9, 2^{12}, 2^{15}となればよい.つまりk=9,10,11の場合であるので最大のものはk=11である.

岩手大学2018農学部第2問を解く

教科書の例題のような問題である。
適切に記号が使えるかどうかを問いたいのだろうか。

2.
初項が5である等差数列\{ a_n \}と,初項が2である等比数列\{ b_n \}がある(n=1,2,3,…)。
数列\{ c_n\}c_n=a_n - b_n,c_2=5,c_3=-1,c_4=-31で定められるとき,次の問いに答えよ。
(1) 数列\{ a_n \}の公差dと\{ b_n \}の公比rを求めよ。
(2) \{ c_n \}の一般項を求めよ。
(3) \{ c_n \}の初項から第n項までの和S_nを求めよ。
解)
(1)
初項5,公差dの等差数列であるから a_n=5+(n-1)d
初項2,公比rの等比数列であるから b_n=2r^{n-1}
c_2=a_2 - b_2=5+d-2r=5…(A)かつc_3=a_3 - b_3=5+2d-2r^2=-1…(B)となるので,
これを連立方程式と見て解く。(A)×2-(B)とすると5-4r+2r^2=11よりr^2-2r-3=0となる.
(r+1)(r-3)=0よりr=-1,3が得られる。
ここでr=-1c_n=2n-3-2 \cdot (-1)^{n-1}よりc_4=7で条件を満たさない.
r=3は条件を満たしd=6を得る。これが求める値である.

(2)
(1)に代入することでc_n=6n-1-2 \cdot 3^{n-1}を得る.

(3)
数列\{ a_n \},\{ b_n \}の初項から第n項までの和をそれぞれ求め引けばよい.
\displaystyle \sum_{k=1}^{n}a_n=\sum_{k=1}^{n}(6n-1)
    =\frac{1}{2}n(5+(6n-1))
    =n(3n+2)
\displaystyle \sum_{k=1}^{n}b_n=2\sum_{k=1}^{n}3^{k-1}
    \displaystyle =2\frac{3^n-1}{3-1}
    =3^n-1
以上よりS_n = n(3n+2) -3^n +1である.

岩手大学2018農学部第1問を解く

2年ぶりに帰ってきた過去問解答である.
今回も出だしは小問集合だが,なんとここに平面のベクトルの問題がある.
この瞬間,以降の大問には幾何学的ベクトルの問いがないことが分かって衝撃を受ける。
もうベクトルの大問を出題することはあきらめてしまったのだろうか?

1.
(1) 2進法で11101011_{(2)}と表される数を5進法で表せ。
解)
11101011_{(2)}を10進法に直すと2^7+2^6+2^5+2^3+2^1+2^0=235である。
235を5で割り続け,余りを見ていくことで1420_{(5)}を得る。

(2) 三角形OABにおいて,辺OAを1:2に内分する点をC,
辺OBを1:3に内分する点をD,
線分ADの中点をEとする。また,\vec{OA}=\vec{a},\vec{OB}=\vec{b}とする。
このとき,\vec{CE}\vec{a}, \vec{b}を用いて表せ。
解)
\vec{OC}= \frac{1}{3} \vec{a},\vec{OD}= \frac{1}{4} \vec{b}より
\vec{CE}=\vec{OE}-\vec{OC}
  =\frac{1}{2}(\vec{OA}+\vec{OD})-\vec{OC}
  =\frac{1}{2}(\vec{a}+\frac{1}{4} \vec{b})-\frac{1}{3} \vec{a}
  =\frac{1}{6}\vec{a}+\frac{1}{8}\vec{b}.

(3) 1個のさいころを投げて出た目をaとするとき,
2次方程式x^2 -ax +2a-3=0が実数の解をもつ確率を求めよ。
解)
2次方程式が実数の解を持つのは
この方程式の判別式DがD \geq 0を満足するときである.
D=(-a)^2-4 \cdot 1 \cdot (2a-3)=(a-2)(a-6)
であるから(a-2)(a-6) \geq 0を解いてa \leq 2, 6 \leq aを得る.
aはさいころの目だから起こりうるすべての場合は6通りであり
これらは同様に確からしい.
一方不等式を満たす目は3通りであるから求める確率は\frac{3}{6}=\frac{1}{2}である.