べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

直積群の基本

G_1, G_2を群としたとき,直積集合G_1 \times G_2の元(a_1, a_2),(b_1,b_2)に次のように演算を入れる。
(a_1, a_2)(b_1,b_2):=(a_1b_1,a_2b_2)
右辺のそれぞれの成分は,元の群の演算をおこなうこととする。これで直積集合は群となる。直積群,もしくは単に直積と呼ぶ。

Gの部分群H_1, H_2が次の2条件を満たすとする。
1) H_1の任意の元とH_2の任意の元は可換である。
2) 任意のGの元aはあるa_1 \in H_1およびa_2 \in H_2a=a_1a_2と一意的に表せる。
Gは部分群H_1, H_2の直積であるといい,G=H_1 \times H_2と表す。

最初の定義は与えられた2個の群から新たな群を生み出す方法であり,2番目の定義は1つの群を分解するイメージだろうか?素因数分解のような…。群論のイメージは自分自身にはまだあまりないので,よく分からないが今のところはそのように認識しておこう。

(追記19.9.23)
半直積というものもあることを知った。ソースはウィキブックスである。あなどれない。

勾配(grad)の話

ナブラというものがある。
\nabla = \partial _1 e_1 + \partial _2 e_2 + \cdots + \partial _n e_nで定義する。
ここでe_*は各軸の正方向の単位ベクトル(=基本ベクトル)である。

つまりナブラは微分作用素であって,関数fに対して
\nabla f=\partial _1 f e_1 + \partial _2 f e_2 + \cdots + \partial _n f e_n
となり各成分の方向への偏微分をベクトルで表現している。

このナブラを使うと、関数の勾配を計算できる。

具体例を挙げておく。
例.
f(x,y)=\sqrt{9 - x^2 - y^2}, x^2 + y^2 <9とする。
このとき\nabla f(x,y,z)=(\frac{-x}{9-x^2-y^2},\frac{-y}{9-x^2-y^2})である。

正直これではなんのことやら?である。
もう少し考えてみよう。

上の例の関数はz=f(x,y)とすると3次元空間内の曲面を与える。
そこでこの曲面の各点(a,b,f(a,b))接平面を求める。
接平面
 z = f(a,b) + \partial_x f(a,b) (x-a) + \partial_y f(a,b) (y-b)
で与えられる。

(20.6.17)
タイトルと内容を書き換えた。

三角不等式(絶対値)

実数a, bに対して,次の不等式が成立する。
|a+b| \leq |a| + |b|
この不等式を三角不等式という。

証明は右辺の平方と左辺の平方を計算する方法が教科書にある。
ほかにもこのような方法もよく知られている。

(証明)
絶対値の性質から従う式-a \leq |a| \leq a, -b \leq |b| \leq bの辺々を加えると,
 -(a + b) \leq |a| + |b| \leq a+bとなる。これと証明すべき式は同値である。
(証明終)

前の日の複素数の方程式(東北大学)の記事について

問題文には必要十分条件であることを示せ、と書かれているが果たしてこれでいいのだろうか、と一瞬迷った。
つまり議論的にはzがちょうど2個存在するための十分条件を求めただけのように見える。
逆はいいのか…?という話である。

結論から言うと問題ない。
なぜならこの解は、次のような構造で解かれているからである。
(1)\alpha \neq \bar{\beta}ならばzがちょうど2個となる
(2)\alpha = \bar{\beta}ならばzがちょうど2個とならない
つまり\alpha, \bar{\beta}の起こりうる関係をすべて調べつくしている。そこで対偶をとってみる。
(1)´ zがちょうど2個とならないならば\alpha = \bar{\beta}
(2)´ zがちょうど2個となるならば\alpha \neq \bar{\beta}
よって、同値であることが示されるのである。

東北大学2017年数学問5を解く

難しかった。複素数の方程式の解の存在条件なんて知らなかったからだ。
かなり考えて、結局は実数の話にすりかえることで解決できることに気がついた。

5.\alpha, \beta, \gamma複素数とし,z \bar{z}+\alpha z + \beta \bar{z} + \gamma=0…(*)を満たす複素数zを考える.
以下の問いに答えよ.
(1) z(\alpha - \bar{\beta})z - (\bar{\alpha} - \beta)\bar{z}+\gamma - \bar{\gamma}=0を満たすことを示せ.
(2) |\alpha|=|\beta| \neq 0と仮定し,また\gammaは負の実数であると仮定する.このとき,(*)を満たすzがちょうど2個あるための必要十分条件\alpha, \betaを用いて表せ.

解)(1) (*)の両辺の複素共役をとり、辺々引くと得られる.
(2) 仮定から(1)の式は(\alpha - \bar{\beta})z - (\bar{\alpha} - \beta)\bar{z}=0となる.
移項して\alpha z + \beta \bar{z} =\bar{\alpha} \bar{z} + \bar{\beta} z=\overline{\alpha z + \beta \bar{z}}が得られる.
これは\alpha z + \beta \bar{z}が実数であることを意味する.つまり(*)は実数の方程式であることが分かる.
z=x+yi, \alpha=a+bi, \beta=c+diとおき,(*)に代入し整理すると次の式が得られる.
x^2 + y^2 +(a+c)x+(-b+d)y+\gamma + ((b+d)x+(a-c)y)i=0…(**)
左辺が実数であることから虚部が0より(b+d)x+(a-c)y=0…(***)を得る.
(**)と(***)をx,y連立方程式とみて解くが,以下のように場合分けして考える.
(i)a-c \neq 0の場合
y=\frac{b+d}{a-c} xと変形できるので,\frac{b+d}{a-c}=Aと置き換えて,(**)に代入する.
(1+A^2)x^2+((a+c)+(d-b)A)x+\gamma=0
これはxについての2次方程式である.\gamma < 0に注意すると,この方程式の判別式はD=((a+c)+(d-b)A)^2-4(1+A^2)\gamma >0となるので,常に異なる2個の実数解が存在する.よって元のzの実部が異なるので,(*)を満たすzも2個存在する.
(ii)a - c =0の場合
(***)は(b+d)x=0となる.
x=0のとき(**)はy^2 + (-b+d)y + \gamma =0となる.\gamma < 0に注意すると,この方程式の判別式はD=(-b+d)^2- 4 \gamma >0であるから,yが異なる2個の実数解を持つことになり,zの虚部が異なり,(*)を満たすzも2個存在する.
b+d =0のとき,(**)はx^2 + y^2 +2ax -2by + \gamma =0となる.
どのようなa, bに対しても(x+a)^2 + (y-b)^2=a^2 + b^2 - \gammaとなる.
この式の右辺は常に正ゆえ,中心(-a,b),半径\sqrt{a^2 + b^2 - \gamma}の円の方程式を表す.
つまりx,yは円周上の点をすべてとるので,zも無数に存在する.
以上(i)(ii)からa=c,b=-dのときを除いて(*)を満たすzはちょうど2個存在することになる.
\alpha, \betaの言葉で言い換えると,\alpha \neq \bar {\beta}が求める条件である.

岩手大学2017農学部第5問を解く

珍しく単純な多項式の問題だが,なんというか,微妙な出題だと思う。
物足りない感じがするので,元々はもうちょっと尾ひれがあったか,
問いたいものがあったのかもしれない。

5.
実数 x について,A=x^4+4x^3+4x^2+5,B=x^2+2x+2とおくとき,次の問いに答えよ。
(1) 整式Aを整式Bで割った商と余りを求めよ。
(2) ABの2次式で表せ。
(3) 設問(2)で求めた式を用いて,\frac{A}{B}の最小値と,そのときのxの値を求めよ。

解)
(1)
割り算を実際実行すればよく,商x^2+2x-2,余り9である。

(2)
(1) の計算から,割り算の原理を使って書き下すと
A=B \times (x^2+2x-2)+9
であるが,x^2+2x-2=B-4よりA=B(B-4)-9=B^2-4B+9となる。

(3)
B=(x+1)^2+1>0であるから(2)の両辺をBで割って,\frac{A}{B}=B-4+\frac{9}{B}を得る。
ここで右辺に相加相乗平均の不等式を用いると,
\frac{A}{B}=B+\frac{9}{B}-4 \geq 2 \times 3 -4 =2
等号成立条件はB=\frac{9}{B},つまりB^2=9B>0よりB=3となる。
これは(x+1)^2+1=3より(x+1)^2=2すなわちx=-1 \pm \sqrt{2}である。
以上よりx=-1 \pm \sqrt{2}で最小値2をとる。

岩手大学2017農学部第4問を解く

例によって,関数のグラフをかくことはできない。
技術の問題である…。
そして数学2の積分の分野のオーソドックスな問題であって,練習に丁度いいと思う。
ただし放物線の次数を昇べきの順にしているのは少しだけいじわるのような気がする。
ま、マイナスを出さないということなんだろうが…。

4.
放物線 C:y=2x-x^2と直線\ell : y=axについて,定数a 0 < a < 2 の範囲にあるとき,次の問いに答えよ。
(1) 放物線Cと直線\ellで囲まれた部分の面積をaを用いて表せ。
(2) 直線\ellが,放物線Cx軸とで囲まれた部分の面積を二等分するときのaの値を求めよ。

解)
(1)
放物線と直線の共有点のx座標を求めると-x^2+2x=axを解いてx=0,2-aである。
求める面積はS_1=\int_0^{2-a}(-x^2+2x-ax)dx=\frac{1}{6}(2-a)^3.(1/6公式)

(2)
放物線とx軸で囲まれた部分の面積は\int_0^2(-x^2+2x)dx=\frac{1}{6} \times 2^3
この面積の二等分がS_1に等しければよいので,
\frac{1}{6}(2-a)^3 = \frac{1}{6} \times 2^3 \times \frac{1}{2}
これを解いて,a=2 - 2^{\frac{2}{3}}を得る.