岩手大学2017農学部第2問を解く
今年度も平面のベクトルだった。
(2)でベクトルの話から点の話へ移っているのは、ベクトルの成分を求めよ、だといまいちかっこつかないからだろうか。
2.
座標平面上で原点をOとし、3点をとり、とおく。また、線分ABをに内分する点をP、線分BCをに内分する点をQ、線分PQをに内分する点をRとする。ただしとする。このとき、次の問いに答えよ。
(1) をを用いて表せ。
解)それぞれの点P,Qが内分点として表されているので、
である。
再び点RはPとQの内分点であるから
.
上式を代入して
.
(2) 点Rの座標をtを用いて表せ。
解)をを代入することで
を得る。求める点Rの座標はである。
(3) とが垂直になるtの値を求めよ。
解)とが垂直になるのは、を満たすことが同値である。
であるから,
この2次方程式を解くと、となる。
よりが求めるである。
岩手大学2017農学部第1問を解く
小問集合である.
出題ミスがあったようで(1)は載っていなかった.
ググるとすぐに問題を知ることはできて,次のような問題だったようである.
(1) 鋭角三角形ABCにおいてとするとき,辺ABの長さと△ABCの面積を求めよ.
鋭角三角形にならないのでミスになったわけだ。
(2) 自然数はをみたす。との最大公約数が9のとき,このようなをすべて求めよ。
解)であるから(はとなる整数)が一般解である。
の最大公約数が9であるからとおいて、である。
を順次代入することで適する組み合わせ、が得られる。
(3) 数列が,()を満たすとき,この数列の一般項を求めよ。
解)を解くとであって,からとなる.
数列は初項,公比の等比数列である.
つまりからこの数列の一般項はとなる.
(17.10.15 追記)(2)が大間違い甚だしいものだったので修正した。
東進数学コンクール第44回に挑んだ
かなり手ごわかった.
いままで関数方程式を真剣に考えたことがなかっただけにつらかった.
あまりに冗長になったが,なんとか一応の解答を得たので公開する.
ちなみに締切日は昨日だった.
問題は東進のWebページで見てもらいたい.
解答はいつごろ発表なのだろうか…?
あざやかな解答があると思われるので楽しみに待っていたい.
解)
1st step 特殊な値の計算
与えられた方程式を(E)とおく.
(E)にを代入するととなる.
そこで…(a)とおく.
(E)にを代入すると…(b)となる.
(a),(b)を連立して,を得る.すなわち…(c).
2nd step 関数が単射であること
(E)にを代入すると…(d)が得られる.
関数が単射であることを証明する.
(証明)
任意の実数に対してとする.
(d)よりであって,よりが得られる.
であればとなり証明される.
いまと仮定する.(E)にを代入するととなる.
一方(c)よりであるから矛盾する.ゆえにがいえたからとなり単射であることがいえた.(証明終)
3rd step を得る
(d)にを代入するとであるが,(c)よりとなる.
2nd stepから関数は単射なのでで,であったから…(e)がわかった.
(E)にを代入して(e)とあわせて…(f)もわかる.
(E)にを代入して(f)とあわせてがわかる.
これで(d)はとなるが,みやすいように文字をとりかえて…(g)を得る.
4th step を求める
(E)にを代入する.ただしである.
である.
(g)よりでは単射だったから,となる.
ゆえにが従う.
は以外で定義される関数であるから,高々1個の値を除いたすべての実数を関数の値としてとるのであれば,を改めてとおくことで,その1個の値以外ではの表示を得る.
任意の実数をとり,となるを求める.
式変形してとなるから,(E)にを代入すると(f)よりとなる.
は単射だったから,すなわちであればが得られる.
式から分子はにならないので,このはになることはない.
以上からであればがとれることがわかる.
となるを求める.(E)にを代入すれば(f)よりとなる.
は単射だったからとなることがわかった.
つまり1以外のすべての実数に対して…(S)が示される.
ここで(f)よりであったから(S)はの場合にも成立することがわかる.
ゆえに求める関数はすべての実数に対してである.(終)
(17.8.8)ミスタイプを修正した.
控えめな有理数(滋賀医科大学医学部2016)
「控えめな」という変わった名づけ方なので、これには数学的にそうすべき理由があると思われる。
(2)が大ヒントであって、これがなければ思いつきにくいと思う。
そして問題の全体的な議論は可換環のイデアルの問題の初歩に似ているように感じる。
2.
分母が奇数,分子が整数で表せる有理数を「控えめな有理数」と呼ぶことにする。
例えばはそれぞれと表せるから,ともに控えめな有理数である。
1個以上の控えめな有理数に対して,集合を,
は控えめな有理数
と定める。例えば1はと表せるから,の要素である。
(1) 控えめな有理数が定める集合の要素は控えめな有理数であることを示せ。
(2) 0でない控えめな有理数が与えられたとき,となる0以上の整数が存在することを示せ。
(3) 控えめな有理数が与えられたとき,となる控えめな整数が存在することを示せ。
(4) 2016が属する集合はいくつあるか。ただしは控えめな整数であるとし,とが異なっていたとしてもであれば,とは1つの集合として数える。
(1)
(証明)
2つの分母が奇数の有理数どうしの積もまた分母は奇数となるので,2つの控えめな有理数の積はまた控えめな有理数である。
また2つ以上の分母が奇数の有理数の和は分母が奇数となるので,2つ以上の控えめな有理数の和はまた控えめな有理数である。
したがって集合の要素は控えめな有理数となる。(証明終)
(2)
(証明)
与えられたは(はある奇数)と表せる。
このが条件を満たすであることを証明する。
任意のをとると,ある控えめな有理数を使いと表せる。
今では控えめな有理数であるからである。
逆に任意のをとると,ある控えめな有理数を使いと表せる。
ここでで,は控えめな有理数であるからがいえる。
すなわちであるから,が条件を満たすことが分かり,存在が示された。(証明終)
(3)
(証明)
がすべて0であれば,単にと定めればよいので,以下いずれかのは0でないとする。
すべてのを(2)の証明と同様に分子を素因数分解し,2の指数で最小のものをと定める。
このときが成り立つことを証明する。
任意のをとる。このとき控えめな有理数を用いてと表せる。ゆえにである。
ここでこれらの項をでくくると,くくった部分は控えめな有理数となるから,となる。
また任意のをとると,控えめな有理数を使いと表せるが,
の定め方からあるで(はある奇数)と表示できるものが存在する。
これを使えばとなる。
は控えめな有理数であるからが示される。
以上よりが成り立つことが示された。(証明終)
(4)
(3)までの議論での表示はのものに限って考えれば十分であることが分かる。
であるから, および となる。
したがってが属する集合は全部で6個存在する。
(追記17.6.25)(3)でがすべて0の場合を書いていなかったので1行追加した。
最小公倍数を求める方法
とする.
定理.
が成立する.
(証明)
(は互い素)とする.
このときであるからとなる.
よってとなる.(証明終)
この定理を眺めると,最小公倍数を求める手順に次のようなものがあることに気がつく.
1.ユークリッドの互除法でを求める.
2.をで割り,2つの商との積が最小公倍数である.
やはり例のとおり素因数分解して素因数を見比べるほうが早い気がする.
その方法も一応書いておく.以下を素数とする.
と素因数分解する.
このときである.
例えばの最小公倍数はより
冪の大きい数をとることでが分かる.
ユークリッドの互除法について
の最大公約数をと表す.
定理.(ユークリッドの互除法)
を整数として,をで割った余りをとする.
このとき,.
教科書の証明はなんだか文章ばかりで難しかった覚えがある.
今ならできるだろうか…?
(証明)
をで割った商をとするとと表せる.
右辺をみるとの公約数はの約数となっており,
の公約数になっていることがわかる.
またと変形するとの公約数はの約数となっており,
の公約数になっていることがわかる.
つまりの公約数の集合との公約数の集合は等しいので,
最大公約数は等しい.(証明終)
あっさり解決できた.少しくらいは簡単な整数論が身についているようだ.
このユークリッドの互除法は使いかたが問題である.
例えばの最大公約数を求める場合は,「どんどんスライドさせて割っていく」のである.
(割り算の原理)
(割る数と余りで割り算する.以下繰り返す.)
(割り切れたら終了)
よって最大公約数はである.
ひとまずユークリッドの互除法の使いかたはいいだろう.
ところで上の証明を見ると,結局は次の問題に帰着される.
問.
を示せ.
証明はとすれば,上の証明となんら変わらない議論で示せる.
これがいわゆる,ユークリッドの互除法の原理と呼ばれるものである.