well-definedであることをよくわかるには,そうでない例を作るのがいいのではないか.
例
をと決めてみる.
一見よさそうである.
しかしであるが,であるから像が一致しないので写像でない.
同一のものが2通りで表現されるとき,well-definedであることは確かめなければならない.
well-definedであることをよくわかるには,そうでない例を作るのがいいのではないか.
例
をと決めてみる.
一見よさそうである.
しかしであるが,であるから像が一致しないので写像でない.
同一のものが2通りで表現されるとき,well-definedであることは確かめなければならない.
群はどんな構造になっているのか,が分かればよい.
構造がよく分かっている群と,よく分からない群を橋渡しするのが準同型写像である.
定義(準同型写像)
群から群への写像が
を満たすとき,の準同型写像という.
群の演算が写像を介しても保たれている,ということである.
さらにこの写像が全単射であるとき,は同型写像であるという.
このときは群同型であるといい,とあらわす.
群同型である2つの群は,群としては同一のものとみなしてよい.
少し性質を挙げておこう.
(証明)
1)
右辺,左辺それぞれにをかければ確かめられる.
2)
の最左辺と最右辺にをかければよい.
(証明終)
準同型写像があるときにいつでも群同型写像が存在することを保証するのが準同型定理である.
定理(準同型定理)
写像を群から群への準同型写像とする.
核(零空間)を,像をとおくと
(群同型)が成立する.
この定理を証明する際,well-definedであることを示すことがある意味通過儀礼である.
どういうことかというと,群同型であることを示すためにある写像を定めるのだが,
この写像が矛盾なく定義されていること(=well-definedであること)を確かめなければならない.
が写像であるとはならばということが満たされることである.
普通の集合の間の写像であれば基本的に問題は起こらない.
しかし今回は剰余群からの写像を定めることになる.
剰余群は1個の要素が色々な表示をもつので,確かめなければならないのである.
(証明)
写像をと定める.
(がwell-definedであること)
とする.
より,あるでと表せる.
これよりであるからとなる.
は準同型写像であるからよりである.
つまり写像はwell-definedである.
(が準同型写像であること)
による.
(が単射であること)
とするとである.
からとなるのでである.
任意のに対してとなる.
つまりである.逆向きの包含関係も同様なのでが従う.ゆえに単射である.
(が全射であること)
任意のをとる.あるでと表せる.
このときであるから全射である.
以上より定理は証明された.(証明終)
可解群の性質は比較的保存される.
それらを命題にしてまとめる.
命題
は可解群で,ならばは可解群である.
(証明)
は可解群であるから,
1) という列で,
2) がアーベル群
を満たすものが存在する.ここで群の部分集合に対して,と定める.ならばは部分群となる.
1)の列に対してを作る.
は正規部分群であるから,列の要素はすべての部分群である.
またから,各に対して
となる.つまりである.
さらに
とすれば,第3同型定理よりである.
第2同型定理よりで,右辺はに含まれるのでアーベル群である.
つまりは可解群である.(証明終)
命題
とする.がともに可解群ならばも可解群である.
(証明)
それぞれ可解群であるから,定義を満たす列として
がとれる.
このとき
がの可解群の定義を満たす列である.(証明終)
命題
は可解群であればの部分群は可解群である.
(証明)
は可解群であるから,
1) という列で,
2) がアーベル群
を満たすものが存在する.1)の列に対して
を作る.第2同型定理よりで,右辺はに含まれるのでアーベル群である.
つまりは可解群である.(証明終)
正直なところ,だらだらと定義を書き下していく証明なので読む気がしないと思う.
証明の肝は可解群の定義から列をとることができるということと,証明したい群を積か共通部分をとるなどして生み出すことである.
これをおさえておけば再現は簡単だろうと思う.
ガロア理論を用いて開冪により代数方程式の解の公式が表されるか,ということを示す際,この可解群の話は避けられない.
定義を眺めるといくぶんやる気がそがれると思うが,とりあえず書こう.
定義(可解群)
群が可解群である,とは
1) という正規部分群の列で,
2) はアーベル群
を満たすものが存在することである.
ここからは群は有限群であるとする.
このとき次のことが成り立つ.
定理
群が可解群であることと,
1) という正規部分群の列で,
2) は単純群かつ素数位数の巡回群
を満たすものが存在することは同値である.
(証明)
()は明らかである.
()
可解群で存在する正規部分群の列をさらに細かくする.
となるが存在するならば,それをとることを繰り返す.有限群であるからこの操作は有限回で終了する.
とれなくなったとき,という正規部分群の列であるとする.
このとき各は上のようなが存在しないことから,正規部分群で自明なもの以外は存在しない.つまり単純群である.
または元の正規部分群の列の剰余群の部分群とみなせるから,アーベル群である.
さらに自明な群ではないから,単位元以外の元がとれる.
この元で生成される巡回群を考えれば,それはの正規部分群であるが単純群ででないので全体に一致する.
もしこの巡回群の位数が素数位数でないとすれば,正規部分群を真に含むので単純群であることに矛盾する.つまり素数位数の巡回群である.(証明終)
証明は素直だが,少しやぼったいかもしれない.
さて,可解群の話には次の交換子群の話がついてくる.上の定義があれば十分そうなのだが.
定義(交換子)
群の要素の交換子をで定める.
定義(交換子群)
群の部分群に対し,全体で生成される部分群をの交換子群という.
定義(交換子群列)
群に対し,と定める.
さらにとする.
このようにしてできる列,を交換子群列という.
連続して交換子について定義した.
これが何の役に立つのか,というと察しのいいかたは最後に列が登場したのを見て気がつくだろう.
実はこの交換子群列がどこかでとなれば,は可解群であることが示されるのである.
まさにこの交換子群列が定義の正規部分群の列を与えているのである.
教科書によっては交換子で定義している.
前者の定義だと定義する内容は少なくて済むが,列が抽象的に与えられるためどのようにして見つけるのかが分からない.
後者であれば交換子を定義しなければいけないが,列を具体的に構成して与えられるという利点があるわけだ.
スペクトル分解を学んだことがなかったので,少しだけ考えたあと教科書を調べた。
一般のn次正方行列でできると思って考えていたのだが,教科書には正規行列であることが必要十分とあった。
もう少し勉強してから,ここに書くつもりである。