べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

留数定理その4

留数を何らかの方法で求められれば,積分の値が求まることを前回述べた.
その「何らか」の方法はローラン展開された式から分かる.

例えば関数fの点aにおけるローラン展開が次の形だったとしよう.
  f(z)=\frac{a_{-1}}{z-a}+a_{0}+a_{1}(z-a)+\cdots
両辺にz-aをかけると,分母が払われて
  (z-a)f(z)=a_{-1}+a_{0}(z-a)+a_{1}(z-a)^{2}+\cdots
となる.z=aを両辺に代入したくなるが,afは定義されていない.
そこで代わりに極限をとる.
  \lim_{z \to a}(z-a)f(z)=a_{-1}
これはまさに留数を求めたことになる

これならばどうだろうか.
  f(z)=\frac{a_{-2}}{(z-a)^{2}} +\frac{a_{-1}}{z-a}+a_{0}+a_{1}(z-a)+\cdots
両辺に(z-a)^{2}をかけて分母を払う.ここまで上と同様である.
  (z-a)^{2}f(z)=a_{-2}+a_{-1}(z-a)+a_{0}(z-a)^{2}+\cdots

ここで上と同じように,そのまま極限をとりたくなってしまうがそれはいけない
実際に計算してみると\lim_{z \to a}(z-a)^{2}f(z)=a_{-2}となる.
a_{-2}ではない.求めたいのは留数\large a_{-1}である.

したがって一工夫が必要になる.微分してから極限をとるのである.

やってみよう.両辺一階微分する.
  \frac{d}{dz}(z-a)^{2}f(z)=a_{-1}+2a_{0}(z-a)+3a_{1}(z-a)^{2}+\cdots
z \to aにおける極限をとる.
  \lim_{z \to a} \frac{d}{dz}(z-a)^{2}f(z)=a_{-1}
大成功,というわけだ.

一般にローラン展開の負べきの部分(主要部という)が,k個であるとする.すなわち
  f(z)=\frac{a_{-k}}{(z-a)^{k}}+ \cdots +\frac{a_{-1}}{z-a}+a_{0}+a_{1}(z-a)+\cdotsa_{-k} \not{=}0
の場合を考える.
一番大きい分母を払うように(z-a)^{k}をかけ,(k-1)微分し極限をとる.
多項式微分なのでべきが係数としてあらわれることに注意する.
  \lim_{z \to a} \frac{d^{k-1}}{dz^{k-1}}(z-a)^{k}f(z)=(k-1)! a_{-1}
以上から次の等式が得られる.
  \frac{1}{(k-1)!} \lim_{z \to a} \frac{d^{k-1}}{dz^{k-1}}(z-a)^{k}f(z)=a_{-1}

主要部が有限でおさまるときには,こうして留数が求まる.
このときak位の極である,という.