常微分方程式の局所解の一意存在定理2

以下では常微分方程式の局所解の一意存在定理の証明をする.

証明)(常微分方程式の局所解の一意存在定理)

1st step:同値な方程式

 常微分方程式の両辺を [ 0,t) 上で積分すると,
   x(t) = \int_{0}^{t} f(x(\tau),\tau) d \tau, \quad t \in [-r,r]    (1)
が得られる.逆にx(t) \in C [-r,r ] がこの積分方程式を満たすなら,
fの連続性から右辺はC^1級となる.よって,x(t)は元の常微分方程式を満たす.
今後は積分方程式(1)の解の存在を示す.

2nd step:近似解の構成(Picardの逐次近似法)

 以下のようにして常微分方程式の近似解\{ x^{n} \}_{n=0}^{\infty}を定める.
 まず,0番目を x^{0}(t)=0 で定める.
 次に,n番目 x^{n}=x^{n}(t) \in \{ x \in \mathbb{R}^N\, \mid \, |x| \leq R \}, \quad t \in [-r,\, r] が定まったとする.
このときn+1番目を
  x^{n+1}(t)=\int_{0}^{t} f(x^{n}(\tau),\tau)d \tau, \quad t \in [-r,\, r ]    (2)
で定める.このx^{n+1}\{ x \in \mathbb{R}^N\, \mid \, |x| \leq R \}に属するように時刻T_{0} \in (0, r)を短くとる.
すなわち,
   | x^{n+1}(t) | \leq M \cdot |t|   (3)
であるから,|T_{0}| \leq r M \cdot|T_{0}| \leq R を満たすようにとればよい.
この不等式(3)はすべてのn+1について成立する.
従って,この時刻[-T_{0},\, T_{0}]上では,
いつでもn番目x^{n}が与えられれば,n+1番目x^{n+1}が構成できる.
以降では,I:=[-T_{0},\, T_{0}]とおき,この区間で考える.

3rd step:近似解の収束

 構成した近似解x^{n},n \geq 0 を次のように書く.
 x^{n}(t)=(x^{n}(t)-x^{n-1}(t))+(x^{n-1}(t)-x^{n-2}(t))+ \cdots+(x^{1}(t)-x^{0}(t))+x^{0}(t).
これがある連続な極限関数x=x(t)に収束することを示す.
そのために,各連続関数|x^{j}-x^{j-1}|に対し,I上の優級数が存在することを示す.
そうすれば,WeierstrassのM判定法により,級数の絶対一様収束性が示され,
同時に連続関数xの存在もいえる.
 まず,|f| \leq M積分の三角不等式を合わせて,
  |x^{1}(t)-x^{0}(t)| = \left| \int_{0}^{t}f(x^0 (\tau),\tau)d \tau-0 \right| \leq M \cdot |t|, \quad t \in I
である.一般に,
  |x^{j}(t)-x^{j-1}(t)| \leq \frac{M}{L}\frac{(L \cdot |t|)^{j}}{j!}    (4)
が成立することを数学的帰納法で示す.j番目で成立すると仮定する.j+1番目に対して,
fのLipshitz連続性から,
  |x^{j+1}(t)-x^{j}(t)| = \left| \int_{0}^{t} (f(x^{j}(\tau),\tau)-f(x^{j-1}(\tau),\tau))d \tau \right|\\  \leq \left| \int_{0}^{t} L|x^{j}(\tau)-x^{j-1}(\tau)| d \tau \right|\\ \leq \left| \int_{0}^{t} L \frac{M}{L}\frac{(L \cdot |\tau|)^{j}}{j!} d \tau \right|\\ \leq \frac{M}{L}\frac{(L \cdot |t|)^{j+1}}{(j+1)!}
が従う.途中,数学的帰納法の仮定(4)と積分
   \int_{0}^{t} \tau^{j}d \tau=\frac{t^{j+1}}{j+1}
を用いている.よってj+1の場合の成立も示されたので,
すべてのjについて(4)が成立することが示された.
 (4)の左辺についての級数\exp(x)0のまわりのTaylor展開であるから,
   \sum_{j=1}^{\infty}\frac{M}{L}\frac{(L \cdot |T_{0}|)^{j}}{j!} \leq \frac{M}{L} \exp(L \cdot T_{0})
となる.従って,WeierstrassのM判定法から
  x^{0} + \sum_{n=0}^{\infty} (x^{n+1}-x^{n})
はある極限関数x=x(t)I上絶対一様収束する.

4th stepx=x(t)積分方程式(1)の解であること

 近似解の構成で現れた式(2)の両辺の極限 n \rightarrow \inftyをとる.
x^nxI上絶対一様収束することとf\{ x \in \mathbb{R}^N \, \mid \, |x| \leq R \}でLipshitz連続であることから,
  x(t)= \lim_{n \rightarrow \infty} \int_{0}^{t} f(x^{n}(\tau),\tau)d \tau \\ \qquad \qquad\qquad = \int_{0}^{t} \lim_{n \rightarrow \infty} f(x^{n}(\tau),\tau)d \tau
と極限と積分が交換できる.またf\{ x \in \mathbb{R}^N \, \mid \, |x| \leq R \}でLipshitz連続,
特に連続であるから,
  x(t)= \int_{0}^{t} f(x(\tau),\tau)d \tau
が得られる.従って,x=x(t)は(1)の解であることが示された.

5th step積分方程式(1)の解x=x(t)I上の一意性

 積分方程式(1)のI上の2つの解をx,\, \tilde{x}とする.
それぞれ(1)を満たすことから,各t \in Iに対して次の方程式を満たすことが分かる.
   x(t) - \tilde{x}(t) = \int_{0}^{t} (f(x(\tau),\tau)-f(\tilde{x}(\tau),\tau)) d \tau.
fのLipshitz連続性から,
   |x(t) - \tilde{x}(t)| \leq \int_{0}^{t} L|x(\tau)- \tilde{x}(\tau)|d \tau
が従う.ここでGronwallの不等式から
  |x(t) - \tilde{x}(t)|  \leq 0+ \int_{0}^{t} 0 \cdot  L\exp \Big( \int_{\tau}^{t}  L d \tau' \Big) d \tau =0
が得られる.従って,I上の一意性も得られた.
 以上により常微分方程式の局所解の一意存在定理が示された.   ■