岩手大学2016農学部第4問を解く
(3)の面積比で少しだけ驚いた.
試験会場で余裕がなくなっているとがむしゃらに計算することになるだろう.
実際には曲線と接線で囲まれた部分の面積なので,
被積分関数が因数分解できることを考えるとそうでもない.
4.
曲線をとし,曲線上の点における接線をとする.
(1)接線の方程式を求めよ.
(2)を実数とし,点は接線上にあり,点は曲線上にあるとする.
の範囲をが動くとき,の最大値を求めよ.
(3)接線と曲線で囲まれた図形は,軸によって2つの部分に分けられるが,
それらの面積のうち小さいほうを,大きいほうをとするとき,の値を求めよ.
(解)
(1)
からのときである.
よってである.
(2)
と定める.
となる.
微分して
であるからの範囲では増減表をかくことでで最大値をとることが分かる.
つまりはのとき最大値をとる.
(3)
直線と曲線の差はである.
の因数分解から軸よりも左側の積分区間はであり,
軸よりも右側の積分区間はである.
(左側)
.
(右側)
.
つまりであり,.
岩手大学2016農学部第3問を解く
3.
89も29も素数なので,(1)はすぐ1であることが分かる.
(2)以降の右辺が-20である意味がつかめないのが悔しい.
おそらく何か由来があると思うのだが….
次の問いに答えよ.
(1)ユークリッドの互除法を用いて,89と29の最大公約数を求めよ.
(2)2元1次不定方程式の整数解を1組求めよ.
(3)2元1次不定方程式の整数解として現れるの値のうち,
正のものを小さい順にとする.このとき自然数に対して,
をで表せ.
(4)(3)で定めたに対し,を満たすの値をとするとき,
自然数に対して,をで表せ.
(解)
(1)
割り算することで,およびとなる.
よって最大公約数は1である.
(2)
(1)の1つ目の式をと変形し2つ目の式に代入することで,
を得るからが整数解のうちの1組である.
(3)
の両辺を倍することで,となる.
つまりの整数解はを整数としてである.
ここでが最小となるのはのときをとる.
ゆえには初項,公差の等差数列で表現できるので
が得られる.
(4)
にを代入すると,
よりを得る.
これよりとなる.以上より
(終)
素元と既約元
何度考えても混乱するのでまとめてみる.
こういうところで書いておけば少しは頭に入るだろう.
を可換環とする.
が素元とはならばまたはが成り立つことを言う.
が既約元とはならばまたはのいずれか一方が単元であることを言う.
単元とは逆元をもつ元のことを言う.
素元という言葉から,素数を連想すると思う.
中学校で素数を習う際には,上記の既約元の形で定義するが,素元の定義と必要十分条件なので問題ない.
このことを証明していこう.
可換環について,に対し
ならばまたはが成り立つとき,を整域という.
整域はつまり零因子が存在しない,ということである.
通常の整数の集合や有理数の集合は整域である.
行列は零因子があるので,そのままでは整域にはならないことが分かる.
以下は整域とする.
まず整数の話に限らず「素元ならば既約元」を証明する.
(証明)
を素元とし,であるとする.
左辺がの倍数ゆえ右辺もの倍数である.
素元の定義からならばまたはが成り立つ.
であると仮定すると,となるがとれる.
元の式に代入するとであるが移行してでくくるととなる.
は整域でから,つまりである.
これはが単元であることを意味する.
の場合も全く同様の議論で証明できる.(証明終)
逆はじつは簡単ではない.
イデアルを導入しなければならないからだ.
そして素・極大それぞれのイデアルの概念を説明する.
さらに整数全体で作られる環は単項イデアル整域だということをいう.
こうすれば次の流れで証明できる.
(証明の概略)
既約元が生成するイデアルは極大イデアルである.
元の整数環を極大イデアルで割ると体となる.
体は整域である.
整数環を割って聖域となるイデアルは素イデアルである.
素イデアルを生成するのは素元である.(証明の概略終)
一行目にPID(単項イデアル整域)であることを,
環を割るとは同値類の環を考えることを,
割ると整域や体となることはそれぞれ証明が必要である。
双曲線関数,再び
双曲線関数 - アクセス不能の原因。
ここでも書いたとおり,大学1年のころにを学んだ.
こんなものがあるのか,と思いながらいまいち使う機会もなくぼんやりと覚えるにとどまった.
最近,円の方程式からを定める話の類似で,
双曲線の方程式からと定めることを知った.
これならおそらく死ぬまで忘れないだろう。
数学の記事の定理などに証明を埋め込む
数学の記事を書くのは面白いのだが、困っていたのは証明である。
数学は証明が絶対必要だが、記事として読むときには少しわずらわしさを感じることがある。
大まかに概要をつかみたいときには証明はとにかく脇に置いておきたいときもある。
今まではそういうときには別の記事に分離していたのだが、
ふとYouTubeを見ていたときに「もっと見る」の存在に気がついた。
こうして文章の表示非表示が自由に切り替えられるのなら、使わない手はないだろう。
色々調べた結果
HTML表示/非表示切り替えブロック;divとボタン: 万象酔歩
こちらのサイトの記事を使わせていただくことにした。
早速
測度であることの証明 - アクセス不能の原因。
の最初の補題で実験してみた。
昔ながらのボタンではあるが、なかなかいい。
ただし変なところがあって、はてなブログの特性で自動的に改行のタグが放り込まれる。
そうならないようにタグ上ではいくつかの場所の改行をなくしておく必要があった。
ところで今回参考にさせていただいたサイト様にトラックバックをしたかったのだが、
このはてなブログってトラックバックの機能がないようである。
なんという不親切さか…!
岩手大学2016農学部第2問を解く
前回から大幅に開いてしまった….忙しかったのだ.
問題ももちろん忘れていたので結局解きなおした.
典型的な平面の幾何ベクトルである.
空間の幾何ベクトルが出なかったことに驚きを隠せない.
なんだろう,空間の幾何ベクトルの問題だと正答率が下がるからだろうか?
2.
平行四辺形ABCDにおいてとおき,
であるとする.また,辺BCをに内分する点をE,辺ABをに
内分する点をFとし(ただし,),線分AEと線分DFの交点をPとするとき,
次の問いに答えよ.
(1) との内積の値を求めよ.
なのでである.
両辺2乗すると,
であるから
よって,である.
(2)をおよびで表せ.
であるからとなる.
つまり,である.
点Pが線分AE上に存在するから…(!)(は実数)と表せる.
また,であるから,となる.
ここで点Pが線分DF上に存在するから,…(!!)()と表せる.
とは一次独立なベクトルであるから,係数比較可能で(!)と(!!)から連立方程式を解くことでを得る.
以上からが得られる.
(以下工事中)
岩手大学2016農学部第1問を解く
小問集合である.
昨年度同様,受験者を惑わせる,無駄に大きくどうでもいい数値設定である.
1.
(1) 2次関数 の最小値が負であるような定数 の範囲を求めよ.
解)
与えられた関数を平方完成すると である.
頂点の座標は なので, のとき最小値 である.
この値が負であるとは のことで,この不等式を解くと を得る.
(2) AチームとBチームがサッカーの試合を7回行う.
どの試合でも,Aチームが勝つ確率は,Bチームが勝つ確率は,
引き分けとなる確率はであるとして,Aチームの試合結果が3勝2敗2引き分けとなる確率を求めよ.
解)
3勝2敗2引き分けとなる試合結果が何通りあるか計算する.
勝ちを○,負けを●,引き分けを△で表すと,○を3個,●を2個,△を2個並べる組み合わせに等しい.
これは 通りある.
1つの組み合わせに対して,3勝2敗2引き分けとなる確率はである.
求める確率は である.
(3) 四面体OABCにおいて,
であるとき,辺ABの長さ及び四面体OABCの体積を求めよ.
解)
△OABに対して余弦定理を用いる.
より .
またより.
つまり である.
これより△ABC となる.
仮定より四面体OABCにおいて であるから,底面積を△ABCと見ると高さはOAである.
よって四面体OABC.