べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

京大理系2006年後期第5問(水の問題)

問.(水の問題)
H>0R>0とする.空間内において,原点Oと点P(R,0,H)を結ぶ線分を,z軸のまわりに回転させてできる容器がある.この容器に水を満たし,原点から水面までの高さがhのとき単位時間あたりの排水量\sqrt{h}となるように,水を排出する.すなわち,時刻tまでに排出された水の総量をV(t)とおくとき,\frac{dV}{dt}=\sqrt{h}が成り立つ.このときすべての水を排出するのに要する時間を求めよ.□

原点に頂点がある逆円錐の容器に水を張り,「ある早さ」で水を抜いていくとどれくらいで抜けるか,という問いである.
本来ならこの「ある早さ」を数式に翻訳するのが大変であり,
「時刻 t での水の流入速度 = 時刻 t における水面の面積 × 時刻 t における高さの上昇速度」
で求められる.ここではありがたいことに問題文の「すなわち」以下に書いてある.
よってただ誘導に乗ればよい.
ちなみに,水の高さhは水が抜ければ変わっていくので,時刻tに依存する関数である.

(解)
時刻tでの水の排出量V(t)を求める.
ここでの水の高さはh(t)であり,底面の円の半径は\frac{R}{H}h(t)であるから
 V(t)
 =(円錐の体積)−(ここでの円錐の体積)
 =\frac{1}{3}\pi R^{2} H -\frac{1}{3}\pi (\frac{R}{H}h(t))^{2}h(t)
 =\frac{1}{3}\pi R^{2} H -\frac{1}{3}\pi \frac{R^2}{H^2}(h(t))^3
が得られる.水が排出される早さは,問題文から\frac{dV}{dt}=\sqrt{h}であるから
 \frac{d}{dt}(\frac{1}{3}\pi R^{2} H -\frac{1}{3}\pi \frac{R^2}{H^2}(h(t))^3)=(h(t))^{1/2}
合成関数の微分法を用いると
 -\frac{\pi R^2 h^2}{H^2}\frac{dh}{dt}(t)=(h(t))^{1/2}
となる.両辺を整理して
 (h(t))^{3/2}\frac{dh}{dt}(t)=-\frac{H^2}{\pi R^2}
となる.ここで積分変数をsに変え,両辺を0からtまで積分する.
 \int_{0}^{t} (h(s))^{3/2}\frac{dh}{ds}(s) ds=-\int_{0}^{t}\frac{H^2}{\pi R^2}ds
 \frac{2}{5} ( (h(t))^{5/2} - H^{5/2}) = - \frac{H^2}{\pi R^2}t
上の式でh(0)=Hであることに注意する.
すべての水を排出したときの時刻をt_{0}とすると,h(t_{0})=0であるから,
 \frac{2}{5} ( ( h(t_{0}))^{5/2}-H^{5/2})=-\frac{H^2}{\pi R^2}t_{0}
 \frac{2}{5} ( 0^{5/2}-H^{5/2})=-\frac{H^2}{\pi R^2}t_{0}
整理するとt_{0}=\frac{2}{5}\pi R^{2} H^{1/2}を得る.(終)