べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

平行線公準の話

この話は最終的にはもちろん非ユークリッド幾何の話に行き着いてしまうのだが…
そこの手前,この公準が仮定されれば何ができるのかという話である.

まず簡単に分かるのは,次の錯角の話である.

定理
平行線の錯角は等しい.□

中学校で習う,大変有益な定理である.
また小学校で習う次の話とも関連する.

定理
三角形の内角の和は180°である.□

どちらも角を求めるときの基本になる定理だ.
手放すには惜しい.
昔の数学者の中に,平行線公準は証明可能だ,と考えていた人間がいたのも頷ける.

極限の問題

もう少しいい方法があるかもしれないが,思いつかないのでこのままアップロードする.

問.
|r|<1とする.このとき\displaystyle \lim_{n \to \infty}nr^n=0を示せ.□

(証明)
a_{n}=n|r|^nとする.
数列\{ a_{n} \}_{n=1}^{\infty}が十分大きいnについては単調減少列であることを示す.
隣接二項の比がa_{n+1}/a_{n}=(1+\frac{1}{n})|r|であるから,
n >\frac{|r|}{1-|r|}となるすべてのnに対してa_{n+1} < a_{n}が成立する.
またa_{n} \geq 0であるから,数列は下に有界な単調減少列である.
ゆえに極限\alphaをもつ.
ここで
\alpha
\displaystyle =\lim_{n \to \infty} a_{n+1}
\displaystyle =\lim_{n \to \infty}(n+1)|r|^{n+1}
\displaystyle =\lim_{n \to \infty}n|r|^{n+1} + \lim_{n \to \infty} |r|^{n+1}
\displaystyle =|r| \lim_{n \to \infty} n|r|^{n} + 0
\displaystyle =|r| \lim_{n \to \infty} a_{n}
=|r| \alpha
ゆえに|r|<1であるから,(1-|r|) \alpha =0より\alpha=0である.
|nr^{n}| = n|r|^n=a_{n}であるから示される.(証明終)

思いついたので書き込み.二項定理を用いる.

(証明)
n \geq 2とする.|r|<1よりt=\frac{1}{r}とおくとt>1である.
すなわち|r|^n=\frac{1}{|t|^n}となる.
ここで|t|=1+hh>0)とすると,
n|r|^n
=\frac{n}{(1+h)^n}
=\frac{n}{1+nh+n(n-1)h^2/2+\cdots}
\leq \frac{n}{1+nh+n(n-1)h^2/2}
\to 0 as n \to \infty.(証明終)