べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

差集合について

全体集合Xの部分集合をA,Bとする.
このとき,差集合を次で定義する.A \setminus B =\{ x \mid x \in A , x \notin B \}

差集合の集合算を考えたい.

まず大切なこととして,x \notin A \Leftrightarrow x \in A^{c}であることは押えておく.

命題1.
(A \setminus B ) \setminus C = A \setminus (B \cup C)

(証明)
(A \setminus B ) \setminus C \subset A \setminus (B \cup C)を示す.
x \in (A \setminus B ) \setminus Cを言い換えると,x \in Aかつx \notin Bかつx \notin Cである.
とくに「x \notin Bかつx \notin C」は「x \in B^{c}かつx \in C^{c}」である.
言い換えるとx \in B^{c} \cap C^{c}ということである.
ここでド・モルガンの法則によりx \in (B \cup C)^{c}となる.
ゆえに x \notin B \cup Cであるから,x \in A \setminus (B \cup C)である.
逆の包含関係については下から上に辿っていけばよい.(証明終)

命題2.
A \setminus (A \cap B) = A \cap B^c

(証明)
x \in A \setminus (A \cap B)とする.
これはx \in A かつ  x \notin A \cap B である.
後半について,言い換えると次の三通りのうちのどれかである.
1)x \in A かつ x \notin B
2)x \notin A かつ  x \in B
3)x \notin A かつ  x \notin B
x \in Aより,1)の場合しかありえない.
よって,x \in A かつ x \in B^cであるからx \in A \cap B^cである.
逆向きの包含関係は証明を下から上へ辿っていけばよい.(証明終)

任意のεについて

高校ではまったく出てこないが重要な論法がある.

命題
a,b が定数で,任意の\varepsilon > 0に対して,
  a < b + \varepsilon
が成り立つならばa \leq b である.□

右辺にいくらでも小さくできる項が含まれていると,その項を取り除いても等号付きで不等号が成立する.
証明は背理法による.

(証明)
背理法を用いる.a > bであると仮定する.
このとき\varepsilon = a - b > 0ととると,\displaystyle a < b + (a - b)よりa < aとなる.
これは矛盾である.したがって,a \leq bである.(証明終)

不等号のこと

不等号が学校ではじめて登場するのは小学校2年生なのだそうだ.
もちろん私は初登場した日のことはまったく覚えていない.

しかも「不等号」という名前を出さずに記号<, >を使って数の大小を表現するに留まるのだそうだ.
小学校2年生では少し難しい単語だと判断されたのだろう.

中学校まで,不等号は大小を表現する記号でしかなかった.
それが高校に上がったとたん不等式を解く,証明するという話に変わる.
「マイナスをかけたり割ったりすると,不等号の向きが逆転する」
最初に訪れる山場である.

連続関数と可測関数

連続関数と可測関数の合成がまた可測関数になることを示す.

定理
関数\varphi : \mathbb{R}^{2} \to \mathbb{R} を連続とする.
またf, gは有限な値を持つ実数値可測関数とする.
このとき,F(x):=\varphi(f(x),g(x))も可測関数である.

可測であること

(証明)
\mathbb{R}, \mathbb{R}^2の開基として,開区間をとることができる.
\varphiは連続であるから(a,b)という開区間に対して,\varphi^{-1}( (a,b) )は開集合である.
よって,\mathbb{R}^2は直積空間として,\mathbb{R}区間の直積の合併で表せる.つまり
 \displaystyle \varphi^{-1}( (a,\infty) )=\bigcup_{k=1}^{\infty} (x_{1j}, x_{2j}) \times (y_{1j},y_{2j})
となる.これから
\{ x \in \mathbb{R}^{d} \mid \varphi(f(x),g(x)) > \alpha \}
= F^{-1} ( ( \alpha, \infty)  )
\displaystyle = \{ x \in \mathbb{R}^{d} \mid ( f(x),g(x) ) \in  \bigcup_{k=1}^{\infty} (x_{1j}, x_{2j}) \times (y_{1j},y_{2j}) \}
\displaystyle =\bigcup_{k=1}^{\infty} \{ x \mid x_{1k} < f(x) < x_{2k} \} \cap \{ x \mid y_{1k} < g(x) < y_{2k} \}
等式の最後は可測集合なので示された.(証明終)

この定理の威力は素晴らしく,次の系はほとんど明らかとなる.


(i) 可測関数全体の集合は\mathbb{C}上のベクトル空間である.
(ii) f, gが可測関数ならば積fg,商f/gg \neq 0 a.e.)は可測関数である.
(iii) fが可測関数ならば絶対値のp|f|^pは可測関数である.
(iv) fが実数値可測関数ならば正の部分f^+は可測関数である.

「ほとんどすべて」a.e.

定義.(ほとんどすべて a.e.)
x \in Aに対する命題P(x)が,ある零集合Nの点を除いては成立するとき
命題P(x)ほとんどすべて(almost everywhere)xに対して成り立つ,といい
 P(x) a.e. x \in A
と表す.□

注意
考える集合が明らかな場合,x \in Aは省略可能である.□

稠密でかつ零集合であるものも存在していることは前に述べたとおりである.(例えば,有理数全体の集合\mathbb{Q}\overline{\mathbb{Q}}=\mathbb{R}かつm(\mathbb{Q})=0
これぐらい「ぎっちり」と集合に詰まっている点で成り立たなくても,a.e.という言葉を付け加えて成立するとみなそうというわけである.
まさに零集合の魔術というほかない.

簡単だが重要な補題を示す.

補題
fは可測関数とする.f=g a.e. ならば gも可測関数である.□

(証明)
f=g a.e. よりある零集合Nが存在して,f=g in  \mathbb{R}^{d} \setminus Nとなる.
任意のa \in \mathbb{R}と任意のA \in {\cal P}(\mathbb{R}^{d})に対して
m^{*}(A \cap \{ x \in \mathbb{R}^{d} \mid g(x) > a  \})+m^{*}(A \setminus \{ x \in \mathbb{R}^{d} \mid g(x) > a  \})
=m^{*}(A \cap \{ x \in \mathbb{R}^{d} \setminus N \mid g(x) > a  \})+m^{*}(A \setminus \{ x \in \mathbb{R}^{d} \setminus N \mid g(x) > a  \})
=m^{*}(A \cap \{ x \in \mathbb{R}^{d} \setminus N \mid f(x) > a  \})+m^{*}(A \setminus \{ x \in \mathbb{R}^{d} \setminus N \mid f(x) > a  \})
=m^{*}(A \cap \{ x \in \mathbb{R}^{d} \mid f(x) > a  \})+m^{*}(A \setminus \{ x \in \mathbb{R}^{d} \mid f(x) > a  \})
=m^{*}(A)
最後の等号は f が可測関数であることを用いた.(証明終)

途中零集合Nを差し引きしている.
これはA = (A \setminus N) \sqcup Nからm^{*}(A)=m^{*}(A \setminus N) + m^{*}(N) = m^{*}(A \setminus N)による.

多項式にあらわす

多項式Pは通常次の形式をしている.
\displaystyle P(x) = \sum_{k=0}^{n}a_{k}x^{k}
この式を次のような表示に変更する場合,どのようにするだろうか.
\displaystyle P(x) = \sum_{k=0}^{n}b_{k}(x-\alpha)^{k}

方法1 代入
x=y+\alphaを第1式に代入して,展開する.
yについて整理したのちy=x-\alphaを代入する.
計算をかんがえるとこの方法がよい.

方法2 除法の原理
x - \alphaで割り算を実行する.
証明にはこの方法がよい.