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相加・相乗平均の不等式

数学 不等式

大変有名な絶対不等式である.

定理.(相加・相乗平均の不等式)
n2以上の自然数とする.各x_{k}>0に対して
  \frac{1}{n}(x_{1} + x_{2} + \cdots +x_{n}) \geq (x_{1} x_{2} \cdots x_{n})^{\frac{1}{n}}
が成り立つ.また等号が成り立つ条件はx_{1}=x_{2}=\cdots=x_{n}のときで,またそのときに限る.□

証明については,有名な後ろに跳ねる数学的帰納法を用いたものや,
対数関数が凸関数であることを利用した証明が知られている.
今回はより発想のしやすい微分法を用いた証明を書く.

(証明)
証明すべき不等式について,x_{k}をすべてx_{k}^{n}に置き換え,分母のnを払って,
  x_{1}^{n}+ \cdots + x_{n}^{n} \geq n x_{1} \cdots x_{n}
と変形する.この不等式を示せばよい.
数学的帰納法による.n=2については
  x_{1}^{2} + x_{2}^{2} - 2x_{1} x_{2} = (x_{1} - x_{2})^{2} \geq 0
による.n-1\, (n>2)で成り立つと仮定する.すなわち
  y_{1}^{n-1}+ \cdots + y_{n-1}^{n-1} \geq (n-1) y_{1} \cdots y_{n-1}
が成り立つと仮定する.ここで
y_{k}をすべてx_{k}^{n/(n-1)}で置き換えると
  x_{1}^{n} + \cdots + x_{n-1}^{n} \geq (n-1) (x_{1} \cdots x_{n-1})^{n/(n-1)}…(☆)
が成り立つ.
関数f : (0,\infty) \to \mathbb{R}を次のように定義する.
  f(x)=x^{n} + x_{1}^{n}+ \cdots + x_{n-1}^{n} - n ( x_{1} \cdots x_{n-1})x
関数を x微分する.
  f'(x) = nx^{n-1} -n x_{1} \cdots x_{n-1}
  f''(x)=n(n-1)x^{n-2}
二階微分について,f''>0であるから一階微分f'は単調増加関数である.
また\displaystyle \lim_{x \to +0} f'(x)=-n x_{1} \cdots x_{n-1}<0かつ\displaystyle \lim_{x \to \infty} f'(x) = \inftyである.
よって中間値の定理を用いるとf'(x_{0})=0となるx_{0}が一意的に存在する.
f'(x)=0を解き,x_{0}=(x_{1} \cdots x_{n-1})^{1/(n-1)}を得る.
ゆえに,0< x < x_{0}で関数は減少し,x_{0}>0で関数は増加するから
関数fの最小値はf(x_{0})であり,(☆)より
  f(x_{0})=x_{1}^{n} + \cdots + x_{n-1}^{n} - (n-1) (x_{1} \cdots x_{n-1})^{n/(n-1)} \geq 0
これは関数fがすべてのx>0に対して,0以上になることを意味する.
したがって,数学的帰納法よりすべての2以上の自然数nに対して不等式が成立することが示された.(証明終)