定義.(ハメル基底)
がハメル基底であるとは,有理数体上のベクトル空間の基底のことである.
つまり次の2つの条件を満たすことである.
(i)任意のおよびに対して
ならば
が成立する.(ii)任意のに対して,およびが存在して次の等式が成立する.
.□
定義するのは一向にかまわないが,実際にハメル基底は存在するのだろうか.
それは「任意のベクトル空間には基底が存在する」ことと深いつながりがある.
すなわち選択公理が関わるのである.
定理.
ハメル基底は存在する.□
(証明)
の上の一次独立な組全体と定める.
が集合の包含関係を大小関係とする帰納的な順序集合であることを示す.
任意の全順序部分集合をとる.
このときであり,の上界である.
よってツォルンの補題よりには極大元が存在する.
はを生成する.なぜなら,あるが存在すると仮定すると,
であるからの極大性に矛盾するからである.
したがって,がハメル基底である.(証明終)