べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

カラテオドリの外測度

定義5.(カラテオドリの外測度)
集合X \neq \emptysetに対して,2^{X}上の関数\mu^{*}が次の三つの条件を満たすとき,
\mu^{*}カラテオドリの外測度という.
(i)\mu^{*}(\emptyset)=0 かつ \mu^{*}(A) \in [0,\infty ] for A \in 2^{X}
(ii)A,B \in 2^{X},A \subset B ならば \mu^{*}(A) \leq \mu^{*}(B)
(iii)\displaystyle \mu^{*} \Big( \bigcup_{j=1}^{\infty} A_{j} \Big) \leq \sum_{j=1}^{\infty} \mu^{*}(A_{j}) for A_{j} \in 2^{X}

「集合の外側から測度を調べる」ための道具にはこの性質たちが要となっているのである.
このことに気がついたカラテオドリの洞察力は素晴らしい.
さらにもっと素晴らしい条件をカラテオドリは導入した.以下のようなものである.

定義6.(カラテオドリの条件)
集合X \neq \emptyset 上のカラテオドリの外測度を\mu^{*}とする.
集合E \subset Xカラテオドリの条件を満たす,とは次の等式(C)を満たすことである.
  \mu^{*}(A)=\mu^{*}(A \cap E) + \mu^{*}(A \setminus E) for all A \in 2^{X}  (C) □

注意2
カラテオドリの条件は等号で定義されている.
しかしA=(A \cap E) \sqcup (A \setminus E)であるから,
カラテオドリの外測度の性質(iii)劣加法性より
  m^{*}(A) \leq m^{*}(A \cap E) + m^{*}(A \setminus E)
が従う.つまりカラテオドリの条件の成立を示すには \geqを示せばよい.□

この注意を用いて示す場合も多々ある.

ところで,カラテオドリの条件を眺めて何がしたいのかすぐにわかる人はいるのだろうか.
もちろん凡人以下の私はさっぱりわからなかった.
実はカラテオドリの外測度にカラテオドリの条件を付与した集合系は加算加法的となり,
カラテオドリの外測度は立派な測度として機能する
のである.

こうして何がしたいのか分かっても最大の疑問が残る.
それは「なぜこの定義で上手くいくことに気がついたのか」ということである.
発想の源泉がまるで分からないのである.
こうしてもやもやとした気持ちが残るが,
上手くいくからいいじゃないか」と数学を学ぶ者としてはあるまじき発言をし,
気持ちを押し殺して前へ進んでいくのである.
実際のところ,発想の源泉が分からないのは,私の不勉強なだけだろうと思う.