べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

同様に確からしい

Webで検索してもきっぱりとした言葉にいきあたらないものに「同様に確からしい」がある.

この言葉は高校の確率の屋台骨だが,思いのほか軽視される.

「各事象が同程度で起こることが期待されること」…と“文学的”には書かれる,とされているサイトが多いような気がする.結局のところこの言葉のままではよく分からないというのが本当のところだ.

有名な具体例を挙げてみる.


触っただけでは区別できない黒い球を2個,白い球を1個を袋に入れる.このとき,白い球を引く確率はいくらか.

解答?
区別ができないのだから球は次のような出方をする(はずである).
黒,白
したがって,\frac{1}{2} である.

この解答は「同様に確からしい」の見方からは誤りである.黒い球の出方と白い球の出方は同程度に出るとは考えにくい.同程度で起こると思われる事象は次のとおりである.
1,黒2,白

つまり人には区別できない黒い球も,あえて区別して考えなければならないということである.

以下が正しい解答である.

解答
次の3つの事象が同様に確からしい.
1,黒2,白
したがって,\frac{1}{3} である.

もう少し言葉を付け加える。
起こりうるすべての事象全体を全事象という。
全事象の要素1個だけの事象を根元事象という。
この根元事象が起こる確率が等確率であることを同様に確からしいという。
通常の教科書では同様に確からしいを定義してから確率の定義を行うため,
このような説明をすることができない。そのため上記のような文学的表現をしているのだろう。