方べきの定理について,あまり教科書的ではないことを書いておく.
定理.(方べきの定理)
上の図形について以下の等式が成立する.
.
教科書的な証明は三角形の相似を用いる.
(証明)
とにおいて,
仮定より円周角の定理を用いると ∽ がわかる.
相似な三角形の対応する辺の比はそれぞれ等しいことから,
によって示される.(証明終)
この定理に別証明をつける.そのために下図のように補助線を引く.
ただし点は点から辺への垂線の足である.
(証明)
円の半径をとおく.
に注意する.
ここではの二等辺三角形より,となるから,がわかる.三平方の定理より
かつ
が成り立つ.これらを用いて,となる.これは点を通るどのような弦についても,が成立することを意味する.したがって命題の等式が示された.(証明終)
つまり,方べきの定理に登場するは一定の量であり,具体的には円の半径と円の中心と点の距離によって決まる.このを方べきという.点が円の外でも同様の議論が使えるが,その場合には一定の量はに変わる.
(17.11.16追記)
時代は流れた。今では最後のは教科書にものるようになったようだ。
これは教科書が参考書に近づいているという意味か。それとも、ゆとりをすっかり脱却したという意味か。