ここでは,よく知られたGronwallの不等式を証明する.
定理.(Gronwallの不等式)
を半開区間上連続で,とする.このとき関数が不等式
(1)
を満たすならば,
が成立する.
(証明)(1)の両辺にを乗すと,
により,
が得られる.積分変数をに変え,両辺をからまで積分すると,
が得られる.再び(1)より,左辺を下から評価して,
によりを両辺に乗して
が得られる.よって示された. □
注意.
1.証明のキーポイントはまさに,を(1)の両辺に乗したところである.
の仮定は,このとき不等号の向きが変わらない部分に効いている.
どこからこの発想がきているのかというと,一階線形常微分方程式
の解を求める際に積分因子をかけて積分するところからきていると思われる.
2.が上連続という仮定は強すぎる.実際には上可積分で十分である.