べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

分散の加法性が成り立たない例

例. 確率変数を以下のように定める. .tg {border-collapse:collapse;border-spacing:0;} .tg td{border-color:black;border-style:solid;border-width:1px;font-family:Arial, sans-serif;font-size:14px; overflow:hidden;padding:10px 5px;word-break:no…

驚かされた参考書の紹介

旺文社から出版された毎年出る! センバツ40題 理系数学上位レベル[数学I・A・II・B・III] (大学入試)を見て,大いに驚いた。 今の時代とは思えない参考書だったからである。 内容は問題が40問あり,少々の解説ののちに解答が書かれている。 この解説にはくせ…

ある命題への広義リーマン積分の例

新装版 数学公式集をながめていたら,次の記述を見つけた。が広義リーマン積分可能であっても,2つの関数の積が広義リーマン積分可能とは限らない。確かにそのとおりになりそうな命題であるが,具体例を挙げなければ理解した気にはならないだろう。 ここしば…

東北大学2020理学部数学系AOII第4問を解く

3)が不思議なくらいやっかいである.こんな解き方でいいのだろうか. 3乗根の記号がブログの仕様で出力できないので,で表す.[4] を虚数単位とし,とする. 1) 次の連立方程式を満たす複素数の組をすべて求めよ. ただし,正の実数の3乗根である実数をと記…

真・解法への道!/数学IAIIB(箕輪 浩嗣)の紹介

まったくもってすばらしい参考書である。 全問解いたが、どれも一筋縄では解けないが、解けた後はすがすがしい気持ちになる。 難しすぎず、かといって簡単ではない。すべてが良問である。 ページ数は600ページ近くあり一瞬ひるむが、恐れることはない。 とっ…

2次関数が切り取る線分の長さ

2次関数が直線と2個の共有点を持つとき, それらの共有点を端点に持つ線分の長さを考える。これを切り取る線分の長さという。例題. が軸から切り取る線分の長さを求めよ。解) 与えられた関数は軸と点という共有点を持つ。 線分の長さは共有点の座標の差で…

身の丈、のこと

昨年、当時の萩生田文科相大臣が「身の丈あって勝負」すればいいとのたまった。どういう意図だったとかは後付であって、本音なんだろう。 地方のどうでもいい連中のどうでもいい戯言はくだらないと切り捨てているわけである。自分はその地方に生まれて、今も…

積分と分数

分数の絡まっている積分はいくぶん考えにくいことがある。 そのそれぞれの解法はお互いに関係ないと思われるので個別に覚えるしかないだろう。 いくつかみていこう。以下積分定数は省略する。(1)(は自然数) これはであるか否かで場合分けする。 (2) 部分分…

ラグランジュの恒等式

高校数学でたまーに証明込みで出題される恒等式がある。定理.(ラグランジュの恒等式) 両辺ともに展開すればあっというまに証明はできる。 しかしなんでこんな等式が出てきたんだろう,と疑問に思っていた. 今日幾何ベクトルの力を使うとあっさり解決する…

岩手大学2018農学部第5問を解く

この年度の問題の中で一番解きやすい問題だ。確実に解きたい。5. を整数とする。整式について,次の問いに答えよ。 (1) 整式が1次式を因数にもつことを示せ。 (2) を満たすを求めよ。 (3) の解の1つが整数であるとき,の値を求めよ。解) (1) (証明) で…

岩手大学2018農学部第4問を解く

最初,一般のでやらせるわりには,途中からで固定するためうまみの少ない問題である。 いつもどおりのルートの混じった定積分が登場するが,慌てずに因数分解して公式を使おう。4. の範囲において,直線が放物線 と円 の両方に接している。とする。 このと…

岩手大学2018農学部第3問を解く

典型的な部分と少しだけ頭をつかう部分に分かれた良いパズル的な問題だった。 (3)は案外引っかかるかもしれない。3. ある自然数の3乗になっている数を立方数と呼ぶことにする。 例えば,などは立方数である。 m=25920の立方数について,次の問いに答えよ。…

岩手大学2018農学部第2問を解く

教科書の例題のような問題である。 適切に記号が使えるかどうかを問いたいのだろうか。2. 初項が5である等差数列と,初項が2である等比数列がある(n=1,2,3,…)。 数列がで定められるとき,次の問いに答えよ。 (1) 数列の公差dとの公比rを求めよ。 (2) の…

岩手大学2018農学部第1問を解く

2年ぶりに帰ってきた過去問解答である. 今回も出だしは小問集合だが,なんとここに平面のベクトルの問題がある. この瞬間,以降の大問には幾何学的ベクトルの問いがないことが分かって衝撃を受ける。 もうベクトルの大問を出題することはあきらめてしまっ…

直積群の基本

を群としたとき,直積集合の元に次のように演算を入れる。 右辺のそれぞれの成分は,元の群の演算をおこなうこととする。これで直積集合は群となる。直積群,もしくは単に直積と呼ぶ。群の部分群が次の2条件を満たすとする。 1) の任意の元との任意の元は可…

勾配(grad)の話

ナブラというものがある。 で定義する。 ここでは各軸の正方向の単位ベクトル(=基本ベクトル)である。つまりナブラは微分作用素であって,関数に対して となり各成分の方向への偏微分をベクトルで表現している。このナブラを使うと、関数の勾配を計算でき…

三角不等式(絶対値)

実数に対して,次の不等式が成立する。 . この不等式を三角不等式という。証明は右辺の平方と左辺の平方を計算する方法が教科書にある。 ほかにもこのような方法もよく知られている。(証明) 絶対値の性質から従う式の辺々を加えると, となる。これと証明…

前の日の複素数の方程式(東北大学)の記事について

問題文には必要十分条件であることを示せ、と書かれているが果たしてこれでいいのだろうか、と一瞬迷った。 つまり議論的にはがちょうど2個存在するための十分条件を求めただけのように見える。 逆はいいのか…?という話である。結論から言うと問題ない。 な…

東北大学2017年数学問5を解く

難しかった。複素数の方程式の解の存在条件なんて知らなかったからだ。 かなり考えて、結局は実数の話にすりかえることで解決できることに気がついた。5.を複素数とし,…(*)を満たす複素数を考える. 以下の問いに答えよ. (1) はを満たすことを示せ. (2)…

岩手大学2017農学部第5問を解く

珍しく単純な多項式の問題だが,なんというか,微妙な出題だと思う。 物足りない感じがするので,元々はもうちょっと尾ひれがあったか, 問いたいものがあったのかもしれない。5. 実数 について,とおくとき,次の問いに答えよ。 (1) 整式を整式で割った商…

岩手大学2017農学部第4問を解く

例によって,関数のグラフをかくことはできない。 技術の問題である…。 そして数学2の積分の分野のオーソドックスな問題であって,練習に丁度いいと思う。 ただし放物線の次数を昇べきの順にしているのは少しだけいじわるのような気がする。 ま、マイナスを…

岩手大学2017農学部第2問を解く

今年度も平面のベクトルだった。 (2)でベクトルの話から点の話へ移っているのは、ベクトルの成分を求めよ、だといまいちかっこつかないからだろうか。 2. 座標平面上で原点をOとし、3点をとり、とおく。また、線分ABをに内分する点をP、線分BCをに内分する…

岩手大学2017農学部第1問を解く

小問集合である. 出題ミスがあったようで(1)は載っていなかった. ググるとすぐに問題を知ることはできて,次のような問題だったようである. (1) 鋭角三角形ABCにおいてとするとき,辺ABの長さと△ABCの面積を求めよ. 鋭角三角形にならないのでミスになっ…

東進数学コンクール第44回に挑んだ

かなり手ごわかった. いままで関数方程式を真剣に考えたことがなかっただけにつらかった. あまりに冗長になったが,なんとか一応の解答を得たので公開する. ちなみに締切日は昨日だった. 問題は東進のWebページで見てもらいたい. 解答はいつごろ発表な…

控えめな有理数(滋賀医科大学医学部2016)

「控えめな」という変わった名づけ方なので、これには数学的にそうすべき理由があると思われる。 (2)が大ヒントであって、これがなければ思いつきにくいと思う。 そして問題の全体的な議論は可換環のイデアルの問題の初歩に似ているように感じる。2. 分母…

最小公倍数を求める方法

とする.定理. が成立する.(証明) (は互い素)とする. このときであるからとなる. よってとなる.(証明終)この定理を眺めると,最小公倍数を求める手順に次のようなものがあることに気がつく. 1.ユークリッドの互除法でを求める. 2.をで割り,2…

ユークリッドの互除法について

の最大公約数をと表す.定理.(ユークリッドの互除法) を整数として,をで割った余りをとする. このとき,.教科書の証明はなんだか文章ばかりで難しかった覚えがある. 今ならできるだろうか…?(証明) をで割った商をとするとと表せる. 右辺をみると…

二次形式って何ですか?

正直に告白すると、二次形式というものを勉強したことがない。 使ったことが全くない。Wikipediaによれば、二次形式は多方面で中心的な地位を占めるもののようだ…。 全く知らない。いままで中心を回避して勉強していたということなのだろうか。 まるで複素積…

カップル成立の確率

安田亨先生の伝説の良問100を読んでいたら,次の問題があった。問. 男性が2人,女性が2人いる。各々は自分の異性をでたらめに1人指名する。 互いに相手を指名すればカップルが成立するものとして, ちょうど1組カップルが成立する確率を求めよ。n人まで一般…

微分と積分の交換可能の条件

ルベーグの優収束定理を用いて,微分と積分の交換可能の条件を求める.定理 上の関数が次の条件を満たすとする. 1) 各に対してはで積分可能である. 2) は存在し,ある1変数関数でとなるものが存在する. このときが成立する.