「控えめな」という変わった名づけ方なので、これには数学的にそうすべき理由があると思われる。
(2)が大ヒントであって、これがなければ思いつきにくいと思う。
そして問題の全体的な議論は可換環のイデアルの問題の初歩に似ているように感じる。
2.
分母が奇数,分子が整数で表せる有理数を「控えめな有理数」と呼ぶことにする。
例えばはそれぞれと表せるから,ともに控えめな有理数である。
1個以上の控えめな有理数に対して,集合を,
は控えめな有理数
と定める。例えば1はと表せるから,の要素である。
(1) 控えめな有理数が定める集合の要素は控えめな有理数であることを示せ。
(2) 0でない控えめな有理数が与えられたとき,となる0以上の整数が存在することを示せ。
(3) 控えめな有理数が与えられたとき,となる控えめな整数が存在することを示せ。
(4) 2016が属する集合はいくつあるか。ただしは控えめな整数であるとし,とが異なっていたとしてもであれば,とは1つの集合として数える。
(1)
(証明)
2つの分母が奇数の有理数どうしの積もまた分母は奇数となるので,2つの控えめな有理数の積はまた控えめな有理数である。
また2つ以上の分母が奇数の有理数の和は分母が奇数となるので,2つ以上の控えめな有理数の和はまた控えめな有理数である。
したがって集合の要素は控えめな有理数となる。(証明終)
(2)
(証明)
与えられたは(はある奇数)と表せる。
このが条件を満たすであることを証明する。
任意のをとると,ある控えめな有理数を使いと表せる。
今では控えめな有理数であるからである。
逆に任意のをとると,ある控えめな有理数を使いと表せる。
ここでで,は控えめな有理数であるからがいえる。
すなわちであるから,が条件を満たすことが分かり,存在が示された。(証明終)
(3)
(証明)
がすべて0であれば,単にと定めればよいので,以下いずれかのは0でないとする。
すべてのを(2)の証明と同様に分子を素因数分解し,2の指数で最小のものをと定める。
このときが成り立つことを証明する。
任意のをとる。このとき控えめな有理数を用いてと表せる。ゆえにである。
ここでこれらの項をでくくると,くくった部分は控えめな有理数となるから,となる。
また任意のをとると,控えめな有理数を使いと表せるが,
の定め方からあるで(はある奇数)と表示できるものが存在する。
これを使えばとなる。
は控えめな有理数であるからが示される。
以上よりが成り立つことが示された。(証明終)
(4)
(3)までの議論での表示はのものに限って考えれば十分であることが分かる。
であるから, および となる。
したがってが属する集合は全部で6個存在する。
(追記17.6.25)(3)でがすべて0の場合を書いていなかったので1行追加した。