べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

数学の記事の定理などに証明を埋め込む

数学の記事を書くのは面白いのだが、困っていたのは証明である。
数学は証明が絶対必要だが、記事として読むときには少しわずらわしさを感じることがある。
大まかに概要をつかみたいときには証明はとにかく脇に置いておきたいときもある。

今まではそういうときには別の記事に分離していたのだが、
ふとYouTubeを見ていたときに「もっと見る」の存在に気がついた。
こうして文章の表示非表示が自由に切り替えられるのなら、使わない手はないだろう。

色々調べた結果
HTML表示/非表示切り替えブロック;divとボタン: 万象酔歩
こちらのサイトの記事を使わせていただくことにした。

早速
測度であることの証明 - アクセス不能の原因。
の最初の補題で実験してみた。
昔ながらのボタンではあるが、なかなかいい。
ただし変なところがあって、はてなブログの特性で自動的に改行のタグが放り込まれる。
そうならないようにタグ上ではいくつかの場所の改行をなくしておく必要があった。

ところで今回参考にさせていただいたサイト様にトラックバックをしたかったのだが、
このはてなブログってトラックバックの機能がないようである。
なんという不親切さか…!

岩手大学2016農学部第2問を解く

前回から大幅に開いてしまった….忙しかったのだ.
問題ももちろん忘れていたので結局解きなおした.
典型的な平面の幾何ベクトルである.
空間の幾何ベクトルが出なかったことに驚きを隠せない.
なんだろう,空間の幾何ベクトルの問題だと正答率が下がるからだろうか?

2.
平行四辺形ABCDにおいて\overrightarrow{AB}=\vec{a}, \overrightarrow{AD}=\vec{b}とおき,
 |\vec{a}|=4, |\vec{b}|=5, |\overrightarrow{AC}|=6
であるとする.また,辺BCを1:4に内分する点をE,辺ABをs:(1-s)
内分する点をFとし(ただし,0 < s < 1),線分AEと線分DFの交点をPとするとき,
次の問いに答えよ.
(1) \vec{a}\vec{b}内積\vec{a} \cdot \vec{b}の値を求めよ.
\overrightarrow{AC}=\vec{a}+\vec{b}なので|\vec{a}+\vec{b}|=|\overrightarrow{AC}|=6である.
両辺2乗すると,
 |\vec{a}+\vec{b}|^2 = 36
 |\vec{a}|^2 + 2 \vec{a} \cdot \vec{b} + |\vec{b}|^2 = 36
|\vec{a}|=4, |\vec{b}|=5であるから
 16 + 2 \vec{a} \cdot \vec{b} + 25 = 36
よって,\vec{a} \cdot \vec{b} = - \frac{5}{2}である.
(2)\overrightarrow{AP}\vec{a}, \vec{b}およびsで表せ.
 BE : EC = 1 : 4であるから\overrightarrow{BE} = \frac{1}{5}\overrightarrow{BC}=\frac{1}{5}\vec{b}となる.
つまり,\overrightarrow{AE}=\overrightarrow{AB}+\overrightarrow{BE}=\vec{a}+\frac{1}{5}\vec{b}である.
点Pが線分AE上に存在するから\overrightarrow{AP}=k\overrightarrow{AE}=k\vec{a}+\frac{1}{5}k\vec{b}…(!)(kは実数)と表せる.
また,AF : FB = s : (1-s)であるから,\overrightarrow{AF}=s \vec{a}となる.
ここで点Pが線分DF上に存在するから,\overrightarrow{AE}=(1-t)\overrightarrow{AF}+t\overrightarrow{AD}…(!!)(0 < t < 1)と表せる.
\vec{a}\vec{b}は一次独立なベクトルであるから,係数比較可能で(!)と(!!)から連立方程式を解くことでk=\frac{5s}{5+s}を得る.
以上から\overrightarrow{AE}=\frac{5s}{5+s}\vec{a}+\frac{s}{5+s}\vec{b}が得られる.

(以下工事中)

岩手大学2016農学部第1問を解く

小問集合である.
昨年度同様,受験者を惑わせる,無駄に大きくどうでもいい数値設定である.

1.
(1) 2次関数 y = x^2 -2ax + a + 2 の最小値が負であるような定数 a の範囲を求めよ.
解)
与えられた関数を平方完成すると  y = (x - a)^2 - a^2 + a + 2 である.
頂点の座標は (a, -a^2+a+2) なので,x=a のとき最小値 -a^2+a+2 である.
この値が負であるとは  -a^2+a+2 < 0 のことで,この不等式を解くと a < -1 , 2 < a を得る.

(2) AチームとBチームがサッカーの試合を7回行う.
どの試合でも,Aチームが勝つ確率は\frac{1}{2},Bチームが勝つ確率は\frac{1}{6}
引き分けとなる確率は\frac{1}{3}であるとして,Aチームの試合結果が3勝2敗2引き分けとなる確率を求めよ.
解)
3勝2敗2引き分けとなる試合結果が何通りあるか計算する.
勝ちを○,負けを●,引き分けを△で表すと,○を3個,●を2個,△を2個並べる組み合わせに等しい.
これは {}_7 C_3 \times {}_4 C_2 \times {}_2 C_2 = 210通りある.
1つの組み合わせに対して,3勝2敗2引き分けとなる確率は(\frac{1}{3})^3 \times (\frac{1}{6})^2 \times (\frac{1}{3})^2である.
求める確率は 210 \times (\frac{1}{3})^3 \times (\frac{1}{6})^2 \times (\frac{1}{3})^2 = \frac{35}{432}である.

(3) 四面体OABCにおいて,
 BC=30, CA=26, \cos \angle BAC = \frac{5}{13},OA=18, \angle OAB = \angle OAC = 90^\circ
であるとき,辺ABの長さ及び四面体OABCの体積を求めよ.
解)
△OABに対して余弦定理を用いる.
AB^2 +26^2 -2 \times 26 \times AB = 30^2
AB^2 -52 AB -224 = 0
(AB-56)(AB+4)=0
AB > 0 より AB = 56
また\sin^2 \angle BAC + \cos^2 \angle BAC = 1より\sin^2 \angle BAC = \frac{144}{169}
つまり \sin \angle BAC = \frac{12}{13} である.
これより△ABC = \frac{1}{2} AB \times AC \times \sin \angle BAC = 672となる.
仮定より四面体OABCにおいて\angle OAB = \angle OAC = 90^\circ であるから,底面積を△ABCと見ると高さはOAである.
よって四面体OABC=\frac{1}{3} \times 672 \times OA = \frac{1}{3} \times 672 \times 18 = 4032

多項式の既約判定について

R可換環とする.
多項式R [ x ]上既約であるとは,単元でなく,積の形で書いたときに少なくともどちらか一方は単元であることを意味する.
つまり
1) f \notin R^{\times}
2) f=gh ならば g \in R^{\times} または h \in R^{\times}
からなる2条件を満たすときを言う.そうでないときは可約という.

中学校や高校の段階では因数分解できるかどうか,という話題である.
つまりなんらかの元を代入して 0 になればそれは可約である.(因数定理)
一般に与えられた多項式が既約かどうか見分けるのは難しい.
代入の話で言えば,どのような元が多項式の根になっているか見るだけでは分からないからである.
ただし整数係数多項式の既約判定には,アイゼンシュタインの既約判定法がよい.

定理.(アイゼンシュタインの既約判定法)
\mathbb{Z}係数多項式 f(x)=a_{n}x^{n} + a_{n-1}x^{n-1} + \cdots + a_{1}x + a_{0} の係数について,
次の3条件を満たすある素数 p が存在するとき,多項式 f(x) は既約多項式である.
1) p \nmid a_{n}
2) p | a_{i} (i=0, \ldots , n-1)
3) p^{2} \nmid a_{0} □

もうひとつ.平行移動をかけてもその既約性は変わらない.

命題
多項式 f(x) が既約 \Leftrightarrow a \in R に対してf(x+a)が既約 □

具体例を挙げて確認しよう.

例.
多項式 f(x)=x^3 - 2\mathbb{Z} [ x ] の既約多項式である.

解)
素数 p=2 について,アイゼンシュタインの既約判定法を適用すればよい.

例.
多項式 f(x) = 4x^3 - 3x - \frac{1}{2}\mathbb{Q} [ x ] 上既約である.

解)
すこしばかり変形をする.両辺に2をかける.
 2f(x) = 8x^3 - 6x -1
ここで
 2f(\frac{x+1}{2})
 = 8 (\frac{x+1}{2})^3 -6 (\frac{x+1}{2}) -1
 = x^3 + 3x^2 + 3x + 1 -3x -3 -1
 =x^3 + 3x^2 - 3
であるから素数 p=3 について,アイゼンシュタインの既約判定法を適用すればよい.

上にあげた2つの多項式は「立方体倍積問題」と「角の3等分問題」に関わっている.

well-definedでない例

well-definedであることをよくわかるには,そうでない例を作るのがいいのではないか.


f:\mathbb{Z} / 2\mathbb{Z} \to \mathbb{Z}f( [ a ])=aと決めてみる.
一見よさそうである.
しかし [ 0 ] = [ 2 ] であるが,f( [ 0 ] )=0,f([ 2 ] )=2であるから像が一致しないので写像でない.

同一のものが2通りで表現されるとき,well-definedであることは確かめなければならない.

準同型定理

群はどんな構造になっているのか,が分かればよい.
構造がよく分かっている群と,よく分からない群を橋渡しするのが準同型写像である.

定義(準同型写像
Gから群G'への写像f
f(xy)=f(x)f(y)(x,y \in G)
を満たすとき,f準同型写像という.

群の演算が写像を介しても保たれている,ということである.
さらにこの写像全単射であるとき,f同型写像であるという.
このときG,G'は群同型であるといい,G \cong G'とあらわす.
群同型である2つの群は,群としては同一のものとみなしてよい.

少し性質を挙げておこう.

命題
写像fを群Gから群G'への準同型写像とする.
1) (f(a))^{-1} = f(a^{-1})
2) f(e)=e

(証明)
1)
右辺,左辺それぞれにf(a)をかければ確かめられる.

2)
f(e)=f(ee)=f(e)f(e)の最左辺と最右辺に(f(e))^{-1}をかければよい.
(証明終)

準同型写像があるときにいつでも群同型写像が存在することを保証するのが準同型定理である.

定理(準同型定理
写像fを群Gから群G'への準同型写像とする.
核(零空間)を{\rm Ker}(f) = \{ a \in G \mid f(a)=e \},像を{\rm Im}(f)=f(G)とおくと
G/{\rm Ker}(f) \cong {\rm Im}(f)(群同型)が成立する.

この定理を証明する際,well-definedであることを示すことがある意味通過儀礼である.
どういうことかというと,群同型であることを示すためにある写像を定めるのだが,
この写像が矛盾なく定義されていること(=well-definedであること)を確かめなければならない.
T:A \to B写像であるとはa=a'ならばT(a)=T(a')ということが満たされることである.
普通の集合の間の写像であれば基本的に問題は起こらない.
しかし今回は剰余群からの写像を定めることになる.
剰余群は1個の要素が色々な表示をもつので,確かめなければならないのである.

(証明)
写像f_*f_* : G/{\rm Ker}(f) \ni [ a ] \mapsto f(a) \in {\rm Im}(f)と定める.

f_*がwell-definedであること)
[ a ] = [ b ] \in G/{\rm Ker}(f)とする.
a{\rm Ker}(f) = b {\rm Ker}(f)より,あるk \in {\rm Ker}(f)a=b kと表せる.
これよりb^{-1} a =kであるからf( b^{-1} a)=f(k)=eとなる.
f準同型写像であるから(f(b))^{-1} f(a) =eよりf(a)=f(b)である.
つまり写像f_*はwell-definedである.

f_*準同型写像であること)
f_*([ a ] [ b ])=f_*( [ ab ])=f(ab)=f(a)f(b)=f_*([ a]) f_*([ b ] ) による.

f_*単射であること)
f_*([ a ]) = f_*( [ b ] )とするとf(a)=f(b)である.
(f(b))^{-1} f(a) = eからf(b^{-1} a)=eとなるのでb^{-1} a \in {\rm Ker}(f)である.
任意の ak \in a{\rm Ker}(f)に対してak=b(b^{-1}ak) \in b {\rm Ker}(f) となる.
つまりa {\rm Ker}(f) \subset b{\rm Ker}(f)である.逆向きの包含関係も同様なので[ a ] = a{\rm Ker}(f) = b{\rm Ker}(f) = [ b ] が従う.ゆえに単射である.

f_*全射であること)
任意のa' \in {\rm Im}(f)をとる.あるa \in Ga' = f(a)と表せる.
このときf_* ([ a ])=f(a)=a'であるから全射である.

以上より定理は証明された.(証明終)

可解群の性質

可解群の性質は比較的保存される.
それらを命題にしてまとめる.

命題
Gは可解群で,N \triangleleft GならばG/Nは可解群である.

(証明)
Gは可解群であるから,
1) G=H_0 \triangleright H_1 \triangleright H_2 \triangleright \cdots \triangleright H_r =\{ 1 \}という列で,
2) H_i /H_{i+1}(i=0,1,2, \ldots r-1)がアーベル群
を満たすものが存在する.ここで群の部分集合A,Bに対して,AB=\{ ab \mid a \in A, b \in B \}と定める.AB=BAならばABは部分群となる.
1)の列に対してG=GN=H_0N \supset H_1 N \supset H_2 N \supset \cdots \supset H_r N = Nを作る.
N正規部分群であるから,列の要素はすべてGの部分群である.
またH_i \triangleright N,H_i \triangleright H_{i+1}から,各an \in H_{i}Nに対して
(an)^{-1} H_{i+1}N(an)
=n^{-1}(a^{-1} H_{i+1})( N a)n
=n^{-1}(H_{i+1}a^{-1})(aN) n
=n^{-1} H_{i+1}N
=n^{-1} N H_{i+1}
=NH_{i+1}
=H_{i+1}N
となる.つまり H_{i}N \triangleright H_{i+1}Nである.
さらに
G/N=GN/N=H_0N/N \supset H_1 N/N \supset H_2 N/N \supset \cdots \supset H_r N/N = \{ [ 1 ] \}
とすれば,第3同型定理より(H_{i}N/N )/(H_{i+1}N/N) \cong H_{i}N/H_{i+1}Nである.
第2同型定理より H_i N/H_{ i+1 } N \cong H_i /( H_{i+1}N \cap H_i)で,右辺はH_i / H_{i+1}に含まれるのでアーベル群である.
つまりG/Nは可解群である.(証明終)

命題
N \triangleleft Gとする.G/N,Nがともに可解群ならばGも可解群である.

(証明)
それぞれ可解群であるから,定義を満たす列として
G/N=H_0/N \triangleright H_1 /N \triangleright H_2 /N \triangleright \cdots \triangleright H_r /N = \{ [ 1 ] \}
N \triangleright N_1 \triangleright N_2 \triangleright \cdots N_s=\{ 1 \}
がとれる.
このとき
G \triangleright H_1 \triangleright \cdots \triangleright H_r=N \triangleright H_1 \triangleright \cdots N_s
Gの可解群の定義を満たす列である.(証明終)

命題
Gは可解群であればGの部分群Hは可解群である.

(証明)
Gは可解群であるから,
1) G=H_0 \triangleright H_1 \triangleright H_2 \triangleright \cdots \triangleright H_r =\{ 1 \}という列で,
2) H_i /H_{i+1}(i=0,1,2, \ldots r-1)がアーベル群
を満たすものが存在する.1)の列に対して
H=G \cap H=H_0 \cap H \triangleright H_1 \cap H \triangleright H_2 \cap H \triangleright \cdots \triangleright H_r \cap H=\{ 1  \}
を作る.第2同型定理より(H_i \cap H)/(H_{i+1} \cap H) \cong (H_i \cap H)/H_{i+1}で,右辺はH_i /H_{i+1}に含まれるのでアーベル群である.
つまりHは可解群である.(証明終)

正直なところ,だらだらと定義を書き下していく証明なので読む気がしないと思う.
証明の肝は可解群の定義から列をとることができるということと,証明したい群を積か共通部分をとるなどして生み出すことである.
これをおさえておけば再現は簡単だろうと思う.