高校ではまったく出てこないが重要な論法がある.
命題.
が定数で,任意のに対して,
が成り立つならば である.□
右辺にいくらでも小さくできる項が含まれていると,その項を取り除いても等号付きで不等号が成立する.
証明は背理法による.
(証明)
背理法を用いる.であると仮定する.
このときととると,よりとなる.
これは矛盾である.したがって,である.(証明終)
連続関数と可測関数の合成がまた可測関数になることを示す.
定理.
関数 を連続とする.
または有限な値を持つ実数値可測関数とする.
このとき,も可測関数である.
可測であること
(証明)
の開基として,開区間をとることができる.
は連続であるからという開区間に対して,は開集合である.
よって,は直積空間として,の区間の直積の合併で表せる.つまり
となる.これから
.
等式の最後は可測集合なので示された.(証明終)
この定理の威力は素晴らしく,次の系はほとんど明らかとなる.
系.
(i) 可測関数全体の集合は上のベクトル空間である.
(ii) が可測関数ならば積,商( a.e.)は可測関数である.
(iii) が可測関数ならば絶対値の乗は可測関数である.
(iv) が実数値可測関数ならば正の部分は可測関数である.
定義.(ほとんどすべて a.e.)
に対する命題が,ある零集合の点を除いては成立するとき
命題はほとんどすべて(almost everywhere)のに対して成り立つ,といい
a.e.
と表す.□
注意.
考える集合が明らかな場合,は省略可能である.□
稠密でかつ零集合であるものも存在していることは前に述べたとおりである.(例えば,有理数全体の集合はかつ)
これぐらい「ぎっちり」と集合に詰まっている点で成り立たなくても,a.e.という言葉を付け加えて成立するとみなそうというわけである.
まさに零集合の魔術というほかない.
簡単だが重要な補題を示す.
補題.
は可測関数とする. a.e. ならば も可測関数である.□
(証明)
a.e. よりある零集合が存在して, in となる.
任意のと任意のに対して
最後の等号はが可測関数であることを用いた.(証明終)
途中零集合を差し引きしている.
これはからによる.