べっこう色の記録

かつては日記でしたが、現在は数学のことを多く書いています

可測関数の定義と同値な条件

補題.(可測関数であるための条件)
関数 f に対して次のそれぞれの条件は同値である.
(i)関数 f は可測関数である.
(ii)任意の a \in \mathbb{R}に対して,\{ x \mid f(x) \geq a \} \in \cal{M}(\mathbb{R}^{d})
(ii)任意の a \in \mathbb{R}に対して,\{ x \mid f(x) < a \} \in \cal{M}(\mathbb{R}^{d})
(iv)任意の a \in \mathbb{R}に対して,\{ x \mid f(x) \leq a \} \in \cal{M}(\mathbb{R}^{d})
(v)任意の a,b \in \mathbb{R}に対して,\{ x \mid a \leq f(x) < b \} \in \cal{M}(\mathbb{R}^{d})

すぐ気がつくと思うが,不等号がどのように置き換わっても同値になるのである.
証明については,よく知られているこの話と同じようにすればよい.

例題
開集合の無限個の共通部分は開集合とは限らないことを示せ.

(例題の証明)
次の開集合列を考える.\{ (0, 1+\frac{1}{n}) \mid n \in \mathbb{N}\}
\displaystyle \bigcap_{n=1}^{\infty}(0,1+\frac{1}{n})=(0, 1 ] \notin \cal{O}(\mathbb{R}).(証明終)

この例題は可算無限個の開集合から閉集合を作り出す手がかりとなる.

半連続関数

定義.(半連続)
f\mathbb{R}^{d}上の関数とし,値域は[ 0, \infty] の部分集合であるとする.
任意の a>0に対して,\{ x \mid f(x) > a \} \in \cal{O}(\mathbb{R}^{d})が成り立つとき,f下半連続関数である,という.

また上記の集合の不等号><に変えたものが成り立つとき,上半連続関数であるという.

半連続関数はからのどのような評価にも開集合になるという条件である.
ちなみに関数のグラフでいうと,不連続点における値がグラフの下側の値につながっているものである.
具体例を挙げるならば,次のようなものである.

.(下半連続関数)
関数を次のように定義すると下半連続関数である.
x \leq 0の場合f(x)=0で,x>0の場合f(x)=1

この半連続の定義は可測関数の定義によく似ている.
実際に,半連続関数は可測関数である.
それは開集合が可測集合であるから明らかである.

アルキメデスの原理

物理で同じ名前の原理があるが,これはそれではない.
次の原理である.

命題.(アルキメデスの原理)
任意のa,b >0に対して,あるn \in \mathbb{N}が存在してan>bが成り立つ.□

a>0がどんなに「小さ」く,b>0 がどんなに「大きい」数でも,
2倍,3倍…とするといつかはその「大きい」数を追い抜く瞬間が訪れるということである.
ちりも積もれば山となる.

さて,この原理を用いると次の当たり前に思えるものも証明できる.

命題.(自然数の集合の非有界性)
自然数の集合\mathbb{N}は上に有界ではない.□

(証明)
任意のb>0に対し,命題のa1にとればよい.(証明終)

また極限計算の基本中の基本である\displaystyle \lim_{n \to \infty} \frac{1}{n}=0も示すことができる.

(証明)
任意の\varepsilon > 0をとる.
このとき,アルキメデスの原理から,あるn_{0} \in \mathbb{N}が存在して\varepsilon n_{0} >1が成り立つ.
つまり\frac{1}{n_{0}} < \varepsilonがわかる.
すべてのn \geq n_{0}に対して0 < \frac{1}{n}<\frac{1}{n_{0}}<\varepsilonとなる.
\varepsilon-N論法によって示された.(証明終)